はじめに

単価の安さに目をつぶる理由

目立つのは、東証1部昇格を目的にしているケースです。東証1部昇格を目的とする会社は全部で8社。このうち、カワニシホールディングスとハイパーは最近まで東証2部、ヤマエ久野は福岡、それ以外の5社はマザーズ上場でした。

シノプス以外の7社はすでに東証1部に昇格済み。シノプスも近日中に東証1部昇格が認められるはずですが、いずれにしても昇格基準をクリアするには流通株数を増やしておく必要があります。

現在東証は「1部」「2部」「ジャスダック」「マザーズ」の4市場に分かれています。これが、2022年4月から「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編されます。

東証1部への昇格基準は、現在はジャスダックからだと時価総額は250億円以上ですが、2部やマザーズからは40億円以上です。これは、東証と大証が新規上場会社の獲得競争でデッドヒートを繰り広げていた頃の名残です。東証と大証が合併してしまった今となっては、非合理的でしかありません。当然、この歪みは市場再編までに是正されます。

一連の市場再編の議論では、東証1部企業の数が多すぎるから、時価総額で足切りをし、半分以上を強制降格させるという話が独り歩きをしました。しかし実際には、2022年4月1日時点で1部市場に上場している会社には、新たな1部上場基準に満たない場合でも残留を認めることになっています。このため、少々単価が安くても、基準が緩い今のうちに1部に昇格しておこうというインセンティブが働くのです。

この先も、1部昇格狙いで売り出しや立会外分売を実施する上場会社は出てくるでしょう。市況が悪化していく中で「買う」には勇気が要りますが、安く買えるチャンスであるとも言えるでしょう。

この記事の感想を教えてください。