はじめに

底が見えない原油価格

景気のバロメーターのひとつである原油価格も3月上旬から歴史的な暴落となっています。原油価格は需要と供給で価格が決まりますが、今回のコロナショックでは供給増、需要減というダブルパンチによって価格の暴落が引き起こされています。

まず需要に関しては新型コロナウイルスの震源地、中国の景気減速が発端でした。2月の統計でもPMI、小売売上高で歴史的な低迷を見せています。

供給に関しては3月6日に行われたOPECプラスの交渉決裂がターニングポイントとなりました。減産合意による原油価格安定を目指していましたが、サウジアラビアとロシアで交渉が決裂しました。その上、サウジアラビアが増産の意思を示し、供給過剰の懸念が浮上しました。

これらの結果、2月に50ドル台をつけていたWTI原油価格は、3月上旬に1バレル30ドル台をつける暴落。欧米での感染拡大が進んだ3月中旬には20ドル台前半をつけるなど、下落が止まりません。

原油価格の暴落は石油系企業の信用不安を呼び起こしています。現在の原油価格水準では採算割れの企業が多いことが予想され、石油系企業が発行している低格付けの社債の金利が高騰することで債券市場への影響が高まっています。

新型コロナウイルスが話題となった当初、ウイルスは一過性のものであり、金融不安は引き起こさないという見方が強かったですが、原油価格の暴落というショックが加わったことにより、信用不安の懸念が浮上する形となりました。

先行きにも不安は残ります。需要面では欧米での感染拡大に伴う都市機能の低下で経済活動の懸念が高まっています。供給面ではサウジアラビア、UAE、ロシアなど各国で増産が予想されるなど、供給過剰の懸念が続きます。原油価格の反転上昇には時間がかかるかもしれません。

株を買うタイミングはいつ?

株価が大幅に調整している現在は絶好の買い場といえるのでしょうか。

金融政策の面では各国が対応をしているものの、徐々に対応策が出尽くしとなり、実体経済が深刻化した際に手立てがなくなるリスクをはらんでいます。

原油価格の面では、OPECとアメリカの協調の可能性があるなど反転の兆しは見えるものの、新型コロナウイルスの影響が世界各国で拡大する中で、需要面での不安は日に日に増している状況です。

たしかに、2月中の株価と比較すれば圧倒的に安く見える株価水準ではあります。しかし、株価は将来の景気を映していることを考えると、ここがバーゲンセールとは言いきれない部分もあるのではないでしょうか。

投資できる時間が今後長く残されている若者世代は、時間分散の効果を利用した積立投資を開始するのにいい機会かもしれません。引き続き、楽観視のできない相場展開が予想されるので、投資を始めるにしても注意が必要です。

<文:Finatextグループアナリスト 菅原良介>

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