はじめに

見通し悪化が軽微なセクターは?

大幅な株価調整を経て、米国のバリュエーション(予想PERなど)は大きく切り下がりました。新型肺炎の騒動前にS&P500の予想PERは19倍を超えていましたが、直近では一時13倍を下回りました。

米中貿易摩擦の激化に揺れた2019年4月~9月に、S&P500の予想PERのレンジが、16~17倍にあったことを考えると、足元の水準はそのレンジを割り込み、割高感は大きく後退したように思えます。

また、直近の安値時点で計算したS&P500ベースのPBRは2.5倍まで低下しました。これは2016年の米大統領選時の水準を下回るものであり、2017年以降の「トランプ相場」で積み上げてきたプレミアムをすべて吐き出したかたちとなっています。

業績見通しに対する不透明感がくすぶる投資環境ではあるものの、現在の株価水準なら、米国株の打診買いを検討する価値は高まっていると考えます。

その際の物色対象として候補に挙げられるのは、やはり中長期の成長性に揺るぎのないセクター・銘柄です。この2ヵ月半の間に市場では米企業業績の下方修正が続きました。新型コロナウイルス拡大による世界的な景気減速の影響をまともに受けそうなセクター(エネルギー、資本財、一般消費財、素材など)は、見通しが大きく切り下げられました。

そうした中で、IT(情報技術)セクターの見通し悪化は相対的には軽微にとどまっています。まずは、こうした優良セクター・銘柄の押し目買いが正当化されそうです。

感染症流行の中心になった欧州

新型ウイルスの感染拡大は、アジア地域で落ち着きを見せる一方で、欧米地域での流行が目立ちます。イタリアやスペイン、ドイツ、フランス、英国と欧州全域に広がりを見せる感染拡大の脅威が、株式市場にも暗い影を落としているのが実情です。

英中銀やECBが積極的な金融緩和策を打ち出すものの、投資家の不安心理を押さえ込むには至っていません。欧州には感染症の伝播がやや遅れてやってきたため、事態の沈静化にはまだ時間がかかりそうですが、この間の企業活動の停滞をどこまで各国政府が手当てできるかが、その後の株価の戻りを左右することになるでしょう。

また、需要創出につながるような景気対策を打ち出せるか否かでも、欧州域内での株価パフォーマンスは明暗が分かれそうです。いずれにしても、当面の欧州株に対しては静観することが賢明と考えています。

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