はじめに
感染拡大が終息に向かいつつある中国
今回の新型肺炎の発生源とされる中国では、すでに感染拡大が終息に向かいつつあるように見えます。大方の予想通り、2月分の中国の経済指標は大幅な悪化が明らかになりましたが、市場ではそれをことさら悲観視する雰囲気はありません。
中国経済は1〜3月期に続いて4〜6月期もマイナス成長となる可能性が指摘されています。それでも株価が比較的安定を保っているのは、なりふり構わぬ政策の総動員が株価を下支えし、押し上げるとの期待が高まっているためでしょう。
政策への過度な依存には要注意ですが、半ばトップダウンで政策を実行に移せるのは中国の強みでもあります。新型コロナウイルス禍で欧米の景気下振れが逆風として吹くなか、中国の内需回復がどこまで進むかが相場のカギを握ると見ています。
日本株のリーマンショック並みの割安感
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、日本でも自粛ムードが広がり、それにともなって株価は大幅な調整を強いられました。2月末に2万1,000円台にあった日経平均株価は、わずか半月で1万6,000円台まで下落しました。
国際協調的に日銀が追加の金融緩和策を導入したことなどで、相場はやや切り返しましたが、依然としてボラティリティの高い相場展開が続いています。問題の本質が感染症という点にある以上、その終息の兆しが見えてこない限りは、市場に平静さは戻らないと見るべきでしょう。
さまざまな投資指標から判断して、日本株が売られすぎであることは十分に確認できますが、このような環境下ではバリュエーションがあまり機能しない点には注意が必要です。ただ、それでも市場参加者が認識しているバリュエーションの水準がどの程度なのかを知っておくことも重要です。
何かと市場の話題として取り上げられることが多いPBR(株価純資産倍率)は、TOPIXベースの数値が直近で一時0.9倍を下回りました。株価が企業の解散価値を下回るPBR1倍割れは、最近ではあまり見られなかった光景であり、株価は「リーマンショック級」に売り込まれたと表現できます。
こうした状況は、予想PERで見ても同様であり、現状11~12倍にある予想PERは、リーマンショック以降ではほとんど経験していない領域です。さらに、配当と比較した株価の水準感について見ると、TOPIXベースの予想配当利回りは足元で3%程度まで上昇しています。
世界の感染拡大の状況次第では、株価の下振れもあり得ますが、小康状態が保たれるようなら、日本株の底割れは回避されると予想しています。
<文:投資情報部 チーフ・グローバル・ストラテジスト 壁谷洋和>