はじめに
株価下落率の大きな中小型株は?
今回、中小型株がアンダーパフォームした理由の一つとして、株式売買における需給面の影響もあると考えます。中小型株は大型株に比べてグローバル企業が少なく、内需サービス型の企業のウエイトが高いことから、今回のパンデミックによる世界景気後退が想定される局面では、本来は底堅く推移しても良いともいえます。
つまり、パニック的な株価急落局面において、相対的に流動性の少ない中小型株が大きく売られている可能性があります。
実際、当研究所ユニバースの株価下落率を見ても、業種的にばらつきが小さいことが特徴といえます(下図)。たとえば、過去1ヵ月のユニバース平均の株価下落率は33%ですが、素材・機械・電子デバイスといった業種の下落率も消費者サービス・医薬品・ヘルスケアサービスの下落率もほぼ同じです。
つまり新型コロナウイルスの感染拡大影響や世界的な景気後退影響を受けやすい業種も、相対的に受けにくい業種も、ほぼ同様に下げているように見えます。もし中小型株のアンダーパフォーム要因が需給面の影響が強いとするならば、今回の悪影響を受けにくい業種や企業については売られすぎの可能性があるでしょう。
コロナ相場における中小型株の着目点
先行きの見通しが困難な中、当研究所では以下の観点に着目しています。
(1)DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速により、今後も堅調な業績拡大が続くと見込まれる情報ソフトウェア・デジタルメディアコンテンツ関連企業群、(2)政府主導による教育のICT化推進が目指される中、GIGAスクール構想(小中学生に一人一台のPC支給及び大規模ネットワーク)の好影響が期待される企業群、(3)消費全般の冷え込みも予想される中で、底堅い需要が期待される食品関連や独自の消費者サービスで業績拡大が見込まれる企業群、(4)国内景気の動向に影響を受けにくいヘルスケア・医薬品関連企業群、(5)世界的な景気後退の影響を受けやすい製造業企業の中でも相対的に業績が底堅い一方で、株価下落が大きな企業群です。
<文:企業調査部 嘉山美樹子>