はじめに
通貨安への懸念も
逆に、この各国の利下げは、通貨の下落という弊害にもつながっています。中でも最も通貨下落が目立つのがインドネシアルピアで、対米ドルレートの年初から3ヵ月間での期間騰落率は▲17%強と主要通貨のなかで突出した下落率となりました。直近の水準は1997年後半にアジア新興国を襲ったアジア通貨危機以来、約22年ぶりのレベルに達しています。
ジョコ政権発足以来つづいている経済成長率の減速、政権内の混乱、主要産品のひとつである資源関連需要の低迷など、インドネシア経済にとって景気押し下げ要因が山積しており、直近の通貨安はインドネシア売りであるといえます。
なお、直近、インドネシア政府は2月26日の第1弾、3月13日の第2弾と相次いで景気刺激策を発表しました。政策発表のスピード感という意味では評価できますが、問題はインドネシアの財政難です。
今回の刺激策の内容は、所得税の減免や輸出関連税の納付猶予などで、もともと財政難であるインドネシアの財政をさらに悪化させかねない、という意味で懸念要素です。この刺激策をもって、インドネシア経済の本格回復を期待するのは難しそうです。
<文:明松真一郎 市場情報部 アジア情報課長>