はじめに
コロナ影響下でもかすかな希望
月次業績からすると、小売企業の今後の決算は非常に厳しいものになると予想されます。一方でかすかな希望を見出だせる発表もありました。前述のファーストリテイリングの業績予想をご覧ください。
上記の表の通り、ファーストリテイリングは2020年3~8月の業績予想を売上高が8814.8億円、本業の儲けを示す営業利益を82.6億円と発表しました。これは従来の業績予想からすると大きく下方修正されたもので、メディアではどちらかというと悲観的な論調が目に付きましたが、筆者にはそうは思えませんでした。
同社は日本のみならず、中国や米国、アジアで多数の店舗を展開しており、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を特に大きく受けるであろう企業です。その企業が影響を踏まえたうえでも下半期に営業黒字を達成できる見込みだと発表したのです。
これは経済や株式市場を非常に勇気づける発表だと筆者には感じられました(もちろんファーストリテイリングが今後業績予想を下方修正し営業赤字になる可能性はあります)。
また、イオン(8267)は2021年2月期(2020年3月~2021年2月)の業績予想を発表しました。それは売上高が8兆円~8.4兆円、営業利益が500億円~1,000億円と前期から大きく減るものの、こちらも営業黒字を確保できる見込みであると発表しました。
イオンは前提として「新型コロナウイルス感染症による当社事業への影響は、2021年2月期の年度末まで継続すると想定。消費マインドの冷え込みによる影響は年度末まで継続と想定」と、今後も影響が残ることを組み込んで予想を発表しています。
新型コロナウイルスの影響は甚大で日本経済に大きなダメージを残すことは避けられそうにありません。そうした中でも、一部の企業はそれを乗り越えて今後も黒字を確保できる見込みを発表しています。
ニュースや新聞報道を見ていると、どうしても悲観的なポイントにばかりに目が行きがちです。経済や市場にとって明るいニュースが一部で出てきていることもしっかりと頭に入れて、バランスを取りながら市場に向き合っていくのが大切なのではないでしょうか。
<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>