はじめに

「E」投資家からも強まる「S」重視の圧力

全世界の資産運用会社やNPO投資家、年金基金が集まる投資家連合(275社、運用資産7.7兆ドル)は、コロナ問題に対する企業に「労働者の健康が最優先」「一時帰休の際には、十分な金銭保証を」「自社株買いは停止し、役員報酬も制限せよ」などを要求しています。

コロナ後も、企業に対して業務効率化の手綱を緩めないよう要求し、「働き方改革」などの分野に広がっていく可能性は高いでしょう。

コロナ後の世界では、従来は「E(環境)」を重視していたESG投資家が、企業に対して「S」も要求する圧力が高まりそうです。コロナの感染拡大に伴って、各国でロックダウン(都市封鎖)が実施され、企業は出張の削減や遠隔勤務などでビジネスの効率性を高める取り組みを行っています。

このような経済活動の停滞は、結果として、短期的には温暖化ガスの排出の抑制をもたらしました。たとえば、インドでは、ロックダウンによって全土で大気汚染が改善し、北部パンジャブ州から200㎞近く離れたヒマラヤ山脈が30年ぶりに見晴らせるようになったそうです。

「S」優良企業株は相対的に高パフォーマンス

日本国内のESG投資残高は2019年3月時点で約336兆円と1年前から約45%増加しました。コロナショックで世界的に株価が大幅調整した足元の局面でも、ESGファンド(株式)への資金フローは底堅いです(下図)。

こうした投資マネーの流入を背景に、ESG面での市場評価が個別企業の株価にも影響しています。コロナショックで市場全体が下落する中、ESG投資は平均より安定的で、ESG評価が高い企業の株価は平均を上回る傾向がみられました。

また、「S」の代表格である女性活躍や従業員の健康確保に関する指標「なでしこ銘柄」や「健康経営銘柄」への選出企業からなる株価インデックスは、2010年以降の期間においてTOPIXを上回る高パフォーマンスを示しています。

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