はじめに
コロナ後の世界に向けて
コロナのパンデミック終息に向けて世界は動き出しています。債券市場では、株式市場に先駆けて、世界銀行グループの国際金融公社(IFC)など国際機関が新型コロナウイルスに関連した支援を目的とした債券の発行を開始。社会の特定の課題解決に資金使途を絞った「社会貢献債」の発行額は1〜3月期に約270億ドル(約2.9兆円)と前期の2.1倍に膨らみました。
「環境債」に比べると規模が小さい「社会貢献債」ですが、今後はワクチン開発や経済的打撃を受けた企業や個人の支援のために多額の費用が必要となることから、「社会貢献債」の活用が広がっていく可能性は高いでしょう。
企業レベルでは、米マスターカードが感染症のワクチン開発に注力するビル&メリンダ・ゲイツ財団などに2,500万ドル(約26億7,500万円)を寄付しました。日本では、トヨタ自動車と同グループ各社が医療現場や医療用品の支援のほか、治療薬開発の研究支援にも乗り出すと表明。
医療現場支援として、日産は自社工場を活用した医療用フェイスシールドの製造、帝人は医療用ガウンの生産を行うほか、ソニーなど複数企業が人工呼吸器の生産協力の検討を明らかにしました。サントリーホールディングスや宝酒造、資生堂などは医療機関に向けた消毒液の増産体制に入っています。
今後、世界的な感染症の抑制に向けた取り組みや、ワクチン・治療薬の開発などによって、早期に終息することを願ってやみません。同時に、コロナを背景に強まった「S(社会)」を注目するESG投資の流れはより一層強まっていくと予想されるでしょう。
<シニアストラテジスト 山田雪乃>