はじめに
株価が順調に戻り歩調をたどっています。米国のハイテク株主体のナスダック総合指数は年初来でプラスに浮上しました。相対的に出遅れているわが国の株式市場でも今週初め日経平均は、高値から3月の急落でつけた安値までの下げ幅に対する半値戻しを達成しました。
相場格言では「半値戻しは全値戻し」と言います。下げ幅の半分を取り戻すことができれば、すべて取り戻す目途が立ったという意味です。ここまで来れば危機的状況は脱したと言えるでしょう。市場では一時の総悲観的なムードは薄れ、経済再開に対する期待が高まっているように感じられます。
海外では段階的に外出制限などが緩和されています。また、わが国でも新たな感染者の減少傾向が続く特定警戒都道府県の一部の県と、それ以外の34県の多くを対象に、今月末の期限を待たずに緊急事態宣言の解除が検討されています(本稿執筆時点ではまだ未確定)。ようやく「コロナ後」に目を向ける環境が整ってきたと言えるでしょう。
株価が堅調なのはなぜか?
ただ、この順調な株価の戻り歩調は、実体経済から乖離したバブル的な色彩が強いという声も一部にあります。発表される経済指標は記録的な悪化となり、足元で佳境を迎えている3月期の決算発表では大幅な減益見通しが相次いでいます。
こうした状況を反映し、予想EPSは低下の一途をたどっているにもかかわらず株価が反比例するように上昇しているため、PERが上昇、株価の割高感が強まっているという指摘です。
ただし、こうした異例の経済環境では単年度の予想利益という指標は株価の良い尺度になりません。企業の経営者でさえ業績見通しを立てられないほど環境が不透明かつ流動的なので、この先の予想利益はいくらでも変わり得ます。市場もそのことを理解しているのでしょう。
良い例が米国の雇用統計に対する市場の反応です。4月の雇用統計では、失業率は14.7%と戦後最悪。1929年に始まった大恐慌後の長期低迷期に当たる40年以来、80年ぶりの水準まで悪化しました。雇用者数は2,000万人以上減少しました。1ヵ月でこれほど悪化するのは記録的というか歴史上、例がありません。それでもダウ平均は前日比455ドル高と続伸。
そのわけは、4月の失業者の8割が職場への復帰を前提とした「一時解雇」で、経済再開となれば急激な雇用回復が見込めるからです。株価は1年先を映すと言われます。1年後にはコロナショックで失われた雇用や企業の売り上げ、経済活動の多くが元に戻ると市場は読んでいるのだと思われます。堅調な株価は、「コロナ後の戻り」を反映していると思われます。