はじめに

欧州の不十分な金融財政政策

一方で、米国以外の多くの国において、金融財政政策による対応が不十分にとどまっていることが、2021年にかけて世界経済復調の大きな足かせになり、米国の企業業績そして株式市場の大きなリスクになると筆者は考えています。

欧州では、新型コロナウイルスによる人的被害が極めて大きくなっており、各国政府は財政政策を行っています。ただ、財政政策の規模は限定的で、多くが金融機関や企業への融資対応で、所得補償などの財政支出の規模はGDP対比で2%程度に止まっています。

金融政策ですが、ECB(欧州中央銀行)は危機対応の国債購入拡大を行っていますが、イタリア、スペインなどの国債金利は高止まったままで十分効果を発揮していません。

新型コロナウイルスの被害が甚大なイタリアやスペインでは国債発行が今後大きく増える見込みですが、ECBによるこれら周縁国が発行する国債購入が、他のEU諸国の反対などで不十分にとどまるリスクが大きいためです。

これは、2010年代初頭に深刻になった欧州債務危機と同様の、ユーロシステムが抱える根本問題です。景気悪化に直面しても財政規律の制約があるため、各国の裁量によって必要な財政政策が、財政黒字となっているドイツなど以外で発動されないのです。

5月19日に、ドイツとフランスは、5,000億ユーロ(ユーロ圏GDP対比約3.5%)規模の復興基金の設立で合意しました。これは望ましい動きですが、基金設立の合意に至っただけです。

基金の使い方などについて今後の協議が必要で、実際に財政支出が発動されるのは2021年までずれ込む可能性が高いと筆者はみています。また基金の使い道も今後固まるとみられますが、イタリアなど南欧諸国が必要とする財政政策発動に利用できる可能性は高くないでしょう。

このため、イタリアやスペインの長期金利が高止まった状況が解消されず、そして欧州全体で見れば、甚大な景気の落ち込みに対しては十分な財政政策が行われないと筆者は予想しています。

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