はじめに
「封じ込め成功」の中国にも足かせ
さらに、中国においても金融財政政策が不十分にしか行われないリスクが大きいとみています。同国はコロナウイルス感染の封じ込めには短期間で成功したもようで、製造業を中心に各国に先駆けて一足早く経済活動再開が始まっています。
ただ、ソーシャルディスタンスの徹底を余儀なくされ、サービスを中心に個人消費は危機前の状況にはほど遠い状況です。
そして、1〜3月期の大幅な経済の落ち込みによって、労働市場では大幅な雇用削減が起きたと推測されます。政府の公式統計である失業率は若干の上昇となっていますが、これが労働市場の状況を正確に表していないというのは金融市場では常識でしょう。
また、中国政府における財政政策の対応において、米国のような家計への大規模な所得補償は行われていません。一部企業への減税、医療体制の拡充などに限られており、経済全体に政策効果が行き渡っていないと言えます。
金融政策についても、操作対象となっている政策金利の一つである7日物リバースレポレートは、2019年11月からわずか0.25%引き下げられただけです。事実上引き締め的な金融政策が続いているとみられ、この政策対応が中国経済の大きな足かせになっていると筆者は見ています。
そして、財政政策が不十分に止まっているのは日本も同様です。中国やイタリアと比べれば大規模な財政政策は行われつつあります。ただ、第一次補正予算のうち所得補償が紆余曲折を経て決まりましたが、景気の落ち込みを直接補う分はGDP対比約3%の15兆円程度に止まっています。
今後、第二次補正予算によって若干の上乗せは行われると予想されますが、すでに米国で実現している対応と比べると財政政策の規模は小さく、欧州や中国同様に戦後最大規模の経済の落ち込みに対して、不十分かつ遅れた対応に止まると予想しています。
以上をふまえると、米国以外で財政金融政策が不十分に止まり、コロナ禍以降の経済回復の足かせになることが、米国を含めた株式市場の大きなリスクになると警戒すべきでしょう。
<文:シニアエコノミスト 村上尚己>