はじめに
住空間に求める条件1位は「屋外スペース」
リモートワークが可能になることで、人々の暮らしも変化します。外出制限の経験から、「住空間に屋外スペースは不可欠だ」と考えるフランス人が増え、早くも不動産業界にこの動きが見え始めました。
5月17日発売のJDD紙に掲載された不動産会社Nexityのアラン・ディナン社長のインタビューには、外出制限解除の日取りが発表された4月中旬の時点で問い合わせ件数は通常レベルにまで回復したことや、地方都市の庭付き一戸建てのニーズが増えていることなどが挙げられています。
BNPパリバ・レエル・エステイトが依頼し、調査会社ifopが実施した4月13日の調査では、住空間に求める条件の第1位に「屋外スペース」があがっています。実に81%のフランス人が、庭やテラス、バルコニーなどの屋外スペースが最も重要と答えました。第2位の「家族全員に個室があること(22%)」や、第3位の「より広いリビング(21%)」を、大きく引き離していることも興味深いです。
住空間に求める条件のアンケート
「パリ市内のアパートに暮らして、田舎にセカンドハウスを持つ」という、長年理想とされてきたパリジャンのライフスタイルも、ここへ来て変化の兆しが現れました。実際、外出制限をセカンドハウスで過ごしたパリジャンなどは、リモートワークで仕事をしながら広々とした一軒家に暮らす生活を2ヵ月間送ったわけですから、今一度立ち止まって、自分自身が本当に理想とする暮らしを考え直したとしても不思議ではありません。
また、シャルトル、ルーアン、ランスなどといった地方都市の庭付き一戸建てニーズの盛り上がりからは、外出制限を経験した現代人が、より人間的な規模の暮らしやすい街で生活したいと望んでいることがわかります。
過密都市はだんだんと不人気になる、と見る専門家が多数を占める中、Apur(パリ市都市開発アトリエ)責任者のドミニク・アルバ氏は「多くの人々がパリに住むことを夢見ている。引っ越しで空いた住まいには、すぐに新しい住人が入居するだろう」と述べています。
いずれにせよ、たとえフランス人の都市離れが進んだとしても、パリやリヨン、ボルドーなど、過密都市の不動産価格は暴落しないというのが専門家の一致した意見です。矛盾のように思えますが、これまであまりにも供給不足だった過去が原因していることを、前出のアラン・ディナン氏は指摘しています。