はじめに

地産地消や流通の広がり

次に、ローカルプロダクトの支持が挙げられます。新型コロナウイルスによって露呈した、「フランスにはマスクの工場もなければ、薬の工場もない」という事実は、フランス国民を動揺させることになりました。

コストを優先し、生産場所をインドや中国に移したのは間違いだったとする考えが多くの世論を占める中、食品や衣類といった個人の選択が日常的に行われている分野にもこの考えが反映されています。

ウェブメディアのダーウィンニュートリシオンが依頼し、ifopが実施した調査によると、「5月11日の外出制限解除後に変化すると思われる食習慣は?」の問いに、「環境インパクトを考慮した食生活」を「以前より実行する」と29%が回答。「以前より実行しない」と答えた5%を大きく上まわりました。

外出制限後に変化すると思われる食習慣アンケート

環境インパクトを考える食生活とは、すなわち地産地消や短縮流通の商品を選ぶということです。これを進展させた場合、近郊で育った季節の野菜を食べ、メイドインフランスのシャツを着、余暇は自然の中をハイキングする、というライフスタイルをイメージすることは難しくありません。

「リモートワークにしても、責任ある消費行動にしても、これらは外出制限以前の社会に存在した考えだ」と、JDD紙記者のベルトラン・グレコ氏は指摘します。ここ数年定着したフリーアドレスオープンスペースの導入以降、さらに一歩進んだリモートワークという新しい働き方が望まれてはいましたが、企業側は社員の能力低下を懸念し踏み切ることができずにいました。

外出制限緩和後初の週末の様子(パリ東部ヴァンセンヌの森)

しかし実際にはそうではないことが今回証明され、同時に、オープンスペースは安全距離の確保が難しく、フリーアドレスは移動のたびにデスク周りの全てを消毒しなければならないという、コロナ禍後の社会にとって最大のデメリットが浮上したのです。

「環境コンシャスな社会も、不平等のない社会、人が人に優しい社会も、全てコロナ禍以前に人々が描いていた理想。外出制限解除後の社会は、これらの理想をより強く優先する社会になるのでは」と、グレコ氏は続けました。

働き方が変わり、暮らし方も変わり、消費傾向も変わるなら、総じて社会が変わることになるかもしれません。第一段階として今、明らかである上記の変化は、空間と時間の価値をもう一度再評価し直すフランスの人々の価値観を浮き彫りにしています。

Keiko Sumio-Leblanc / 加藤亨延

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