はじめに

創立100年以上の学校が人気を保ち続ける理由

さて、改めて約100校という数字に移ります。現状の首都圏だけを見れば中高一貫校は約300校弱あります。高校だけの学校も入れれば400校はありますが、ここは中学のある学校数ですから100年以上の歴史をもつ私立中学は全体の三分の一と考えてよいでしょう。

その多くは旧制高校から大学成りをして大学を併設しています。一方、東大合格者輩出校として有名な灘、開成、麻布は明治期からの旧制中学でした。それが新制で中学・高校となりました。これに新制から参入した欧米の中等教育の老舗とも言えるカトリック系の男子校である栄光、聖光学院、鹿児島ラ・サール、愛光、洛星などが加わって戦後の中高一貫の進学校をリードしてきたのはよく知られるところです。

それらの戦後生まれの進学校も加えた有名と言われる私立中学が、たとえば2月1日の入試だけでいえば全体の約二割で、そこに受験生の二分の一が集中しているため、残りの八割の入試は現状一倍台という緩和状況です。

こうしたネームバリューを評価される私立中学は出口管理がしっかりしていることと同時に、中等教育の専門性をよく理解して学校運営に当たっているので命脈を保っているというのがモリの目の見方です。

中等教育の専門性とは、「自立」を促すということについて専門性があるということです。

そしてこれからの10年20年は首都圏でも少子化の大波が中学校に押し寄せますから、中高一貫校を取り巻く環境は更に厳しくなるはずです。

これまでの100年で恐らく最も大きな試練は新制中学が出来た昭和20~30年です。この間にかなりの数の私立の旧制中学が歴史を閉じたことが知られています。それまで旧制中学は受益者負担の考え方で授業料を保護者が負担していましたから、授業料無料の公立中学の出現で私立中学は存立の危機に立たされたのです。それでも生き残った100余校はそれだけ中等教育機関としての評価に耐えたわけです。

多くの私立中等教育学校が範としたイギリスのパブリックスクールには卒業後に歴史に名を刻んだ人物のゆかりの何かしらを目にすることが出来ますが、そのようなロールモデルの現存性―言い換えれば精神的支柱が自立へと誘うのではないかと思います。

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