はじめに

ESGを意識した機関投資家からの資金流入

ESGの考え方を投資判断に取り込む責任投資原則(PRI)に署名した、世界で2000に上る機関投資家の目は、「S(社会)」に集まり始めています。欧州の主要な年金基金や資産運用会社は今春、「コロナ時代の投資家声明」を発表しました。

強調されたのは、「従業員の健康・安全」「雇用の維持」「サプライチェーンの維持」です。投資家が求めるものは、いわゆる世直し運動ではありません。新型コロナの感染拡大に対する企業の対応など、リスクに対して企業が対処する力を保有しているかを評価しています。

ESGに熱心な会社は総じて不祥事が起こりにくく、長続きするビジネスモデルを持っているともみられています。投資の収益を度外視しているわけではなく、より長期の視点で企業を評価する動きが強まっているといえるでしょう。

コロナ禍で業績見通しが不透明となり、従来の投資指標だけでは企業価値を判断しにくくなっています。ESG格付けなどを手掛かりに長期投資を見据えた機関投資家からの資金流入は、ESG高格付け企業にとって一定の株価上昇の支えになるでしょう。

<文:シニアストラテジスト 山田雪乃>

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