はじめに
保管場所問題と、紛失・破棄・改ざんのリスクが回避できる
公正証書にしておくことで、前述のようなリスクを回避することができます。
公正証書遺言は、原本を公証役場で保管します。そして、原本より作成した正本、謄本という、いわゆる写しを渡してくれます。この正本、謄本には、公証人が正式な写しである旨を記載し署名捺印してありますので、原本と同様の効果があるのです。これにより、紛失、廃棄、改ざんの心配はなくなりますし、遺言者が亡くなった場合には、相続人や利害関係人であれば全国どこの公証役場でも、公正証書遺言があるかどうかの検索を行うことができます。つまり、遺言が見つからないということも避けることができます。
自筆証書遺言保管制度を利用した場合には、このような紛失・破棄・改ざんのリスクについても回避できるようになりました。
遺言書の保管制度を利用すると、原本は法務局で預かってもらえます。また、保管されている遺言書は、データであれば全国の遺言書保管所である法務局で確認をすることができるようになりました。
実際に手続きした際の流れを解説
このように遺言書の保管制度は、今までの自筆証書遺言のリスクを回避できるのです。
実際、自筆証書遺言を保管してみた感想としても、保管申請書や添付書類もそこまで複雑なものではありませんでした。
法務局の窓口で遺言書の保管申請をすると、まずは本人確認が求められます。マイナンバー、運転免許証などを提示すると、自筆証書遺言、保管申請書の内容と相違がないかを照らし合わせていました。間違いがなかったので、保管の申請を受理してもらえました。
その後、私の場合は、審査に約40分程度の時間がかかりました。保管申請書に不備がなければ、手数料である3900円の収入印紙を貼付して完了です。不備や記載ミス、漏れがあった場合でも、その場で修正ができるものは対応してくれます。最後に「上記の遺言者の申請に係る遺言書の保管を開始しました。」という保管証が発行され、簡単な注意事項の説明書と併せて渡してくれました。
このように、遺言者本人が、必ず遺言書保管所である法務局に行かなければいけませんが、約1時間程度で保管を申請することができました。
しかし、遺言書の保管制度はあくまで「保管」が目的です。
今回、保管申請をしてみて分かったことは、遺言の内容については一切の確認がなかったということです。書き方に間違いはないか、内容が有効なのかなどを確認してくれるものではありませんし、教えてくれるものでもないということです。