はじめに

そもそも宿泊ビジネスはリスクに弱い

新型コロナウイルスの流行によって、様々な業種が経営難に陥っています。中でも、”ハコモノ”と呼ばれる、物件を賃借して固定費を構えながら行う商売である飲食業や宿泊業などが一番苦しんでいる印象があります。

ハコモノの商売は、賃料や人件費の負担が重くのしかかります。一般的に、飲食店の賃料は売上の10%以下、人件費は30%以下が目標と言われます。他の商品原価や諸経費も含めて、経費を90%以下に抑えて、売上の10%は利益を出そうという業態です。

これに対し、宿泊業は、賃料を始めとする固定費の割合が非常に大きいビジネスです。 売上が月商1000万円でも100万円でも、賃料は変わりませんし、最小額の人件費は同じです。つまり、需要が大きい時はとても儲かるし、需要が下がる時は大損するということ。ハイリスクハイリターンなビジネスです。

インバウンドバブルで大量の素人が参入

近年、このリスクの高いマーケットに、素人が大量に参入しました。民泊です。理由は、初期費用 が安く、2018年6月以前は資格も必要なかったからです。部屋単位で賃借し、最小の人件費(代行費) と賃借料で運営も可能でした。

つまり、ホテルビジネスなのに一般人でも負担できる「固定費」の額でした。また、ホテルビジネスは立地で80%が決まるので、難しいWebマーケティングをしなくても、ホテル予約サイトに出しさえすればお客さんはきました。

さらにこの潮流を後押ししたのが、インバウンドです。良い立地の物件を確保して“それなり”に仕上げれば儲かるマーケットが出来上がりました。ホテルは元々、祝前日で大きく儲けるビジネススタイルでしたが、インバウンドのおかげで平日も稼働させ、全体の稼働率が 90% を超えるホテルが普通になりました。

リピーターを必死で獲得せずとも、普通に部屋を提供すれば、旅全体が楽しいゲストはホテルにも良い評価を書いてくれます。サービスの質は関係ありません。さらに、インバウンドバブルの恩恵を受けて、民泊よりも部屋数を増やしたハイリターン狙いの「そこそこ」の規模のホテルの竣工が相次ぎ始めました。東京五輪もこの流れに拍車を掛けました。

今回のコロナ禍では、民泊業に新規参入した多くの”素人”が予期せぬ事態に直面しています。

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