はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。
資産配分の正解がわからないまま、今までは本やネットで勉強しながら自己流でやってきました。投資歴10年目となるのでリスクについては認識しています。“絶対的に正しい”というような資産配分はないかも知れませんが、現在の配分に問題がありましたら改善提案をいただけると助かります。なお、現在のところ不動産投資には興味がありません。
【現在の資産状況】
収入と支出収入:共働き(夫39歳:額面960万円、妻38歳:450万円) 支出:生活費は月35~40万円
現在の状況:夫が転勤族なため、お互い地方都市で単身赴任生活。子供はいません。一緒に暮らせば生活費はもう少し低くなるが、その場合は妻が仕事を辞めることになり、収入がマイナスになります。また仕事にはやりがいがあるため、できれば辞めたくない。今後も勤務地によって要相談としています。
退職金:転職組のため、退職金は夫婦共にないものと考えています。
金融資産:夫の預貯金は定期積立合わせて2,200万円、株式はETFを合わせて400万円、確定拠出型年金が150万円。妻の預貯金は定期合わせて850万円、株式がETFを合わせて600万円、投資信託が2,120万円、社債が100万円、金プラチナ積立が200万円。
負債:特になし。
住居:現在の家は賃貸、55歳くらいで住みたい場所が確定すれば、購入することも考えてはいるものの、いまだ検討中。実家の相続はお互い予定がありません。
保険:夫2万円/月(55歳まで支払。終身1,000万円)、ガン10年定期1,500円/月、払済保険$80,000、550万円、150万円(すべて終身)。妻4,100円/月(55歳まで支払。終身300万円)、ガン終身1,700円/月。ガン以外の医療保険は二人とも満期後に更新せず解約予定です。
(30代後半 既婚・子供なし 女性)
野瀬: ご質問ありがとうございます。
私となんと近い状況でしょうか! 40歳近い夫婦、子供なし、仕事のためにバラバラになることが多い、ご質問しているのが私の家内ではないのかと一瞬錯覚しました(笑)。質問内容も身近に感じることができ、共感できることが多かったです。
DINKSの資産形成の考え方
さて、今回は「老後資金は足りるか」「子供を2人を私立大学に行かせることができるか」というようなライフイベントについての相談ではなく、投資のポートフォリオに関してかと思いますので、そちらにフォーカスしてお話しいたします。
夫婦の資産形成の場合、大変重要になるファクターとして、非常に予想しにくい2つの要素があります。
(1)子供はいるか(予定はあるか)
(2)離婚する可能性はあるか
こちらは、ともに「なし」という前提でお話します。
1がない場合、基本的に一人当たり3,000万円程度にもなる養育費を積み立てる必要がありませんし、学資保険も不要です。また、不幸にもご自身が若いうちに亡くなったとしても、お子さんの養育費を心配する必要がありません。そのため、保険も最低限のものでよいでしょう。
そうなりますと、自然にポートフォリオにおける安全資産の比率が下がります。もちろん介護など、老後の心配は残りますが、昨今はお子さんがいても、老後の面倒は自分自身でみることを前提と考えたほうがよく、お子さんの有無に決定的な違いはないと思っています。
2に関しては、一番大きいのは家の名義をどちらにするかという問題なのですが、家を買う予定もしばらくなく、不動産投資も興味がないとおうかがいしておりますので問題ないでしょう。
私個人的には、実需と投資をミックスした不動産投資であればおすすめをしているのですが、昨今は少し不動産価格が上がり過ぎていますので、ご質問者の方の投資スタイルでも問題ないと思います。
最適なポートフォリオは?
さて、ここからが本題です。
現在のポートフォリオをエクセルで眺めてみました。夫婦別々で数値を見ると、かなり偏りのあるポートフォリオとなるのですが、合算した比率にすると、預貯金46%、投資(確定拠出含む)が54%となり、比率は理想的かなと思います。
また、投資の中身を見ても、投資信託が59%を占めているため、不動産投資を想定していない人にとって私が理想する投資の割り振りに近いかたちがすでに完成していると思います。
さらに付け加えることがあるとすれば、ご質問者の方の場合、お子さんもおられず、老後資金のシミュレーションでも余裕がありますので、もう少し投資の比率を引き上げて預金40%、投資60%ぐらいにしても大丈夫かと思います。
今後、所得から生活費をマイナスした余剰金を同じ比率で毎月振り分け続けるとよいでしょう。
また、投資信託のなかに海外投資はすでに含まれているかもしれませんが、国内株や債券が中心なのであれば、今後は海外投資の比率を高めてもよいでしょう。
本来、私は投資信託以外での積極的な海外投資をあまりすすめないのですが、ご質問者の方の場合は資産にも余裕がありますし、質問内容を見ていても投資のリテラシーがある程度高い方だと感じました。
そのため、資産総額の1割を超えない程度の範囲であれば、今後はドルやユーロでの外貨預金をはじめてもよいかと思います。
さらに先の話をしますと、順調に資産運用も進むと、夫婦合算で世帯資産が1億を超える9年から10年後ぐらいには、資産総額に占める投資比率を、65%ぐらいに高めてもよいかなと思います。
ご質問者の方は、55歳ぐらいまで不動産を買う予定がないとおうかがいしておりますので、今のポートフォリオではインフレ対策の面が少し弱い気がするからです。ですから、海外預金を含めた投資総額を将来65%に引き上げるという考えも持つようにしてください。
ただ、一点注意していただきたい点があります。
夫婦合算でポートフォリオを考えるには、どうしてもご主人の協力が必要です。しっかりと四半期に一回ぐらい、10万円単位のざっくりポートフォリオを夫婦で共有し、不平不満や不信感を払拭しておくとよいでしょう。
最後に細かい話をいいますと、ご主人の保険は少し高いと思います。ご質問者の方はしっかりお仕事もされており、今後も仕事を続ける予定なのであれば、死亡による高額保証は不要ではないでしょうか。月5,000円以内の掛け捨ての保険でも十分かと思います。
まとめ
・投資ポートフォリオにあまり欠点は見つからない
・預金40%、投資60%を目処に今後は資金を割り振り続ける
・インフレ対策の一環として将来的に投資比率を65%ぐらいまで高める
・ただ過度のリスクは不要
・保険は少し手厚すぎるので特殊な事情がない限り圧縮を検討する