はじめに
ブラッシング詐欺?
では、私たちをどう騙そうとしているのでしょうか。
アメリカのホワイトハウス警察は、これがブラッシング詐欺の可能性があるとしています。確かにそれもあるかもしれません。商品を大手通販サイトから送る際、それが相手方に受け取られれば、商品購入の感想、いわゆるレビューをサイトに書き込むことができます。受け取った本人になりすまして、良い評価をたくさん書きこむことで、通販サイトへのアクセス増加と売り上げを伸ばせます。それが目的だというのです。
実際に、送られてきた郵送物には、宝石やイヤリングとの記述もあったそうですから、それは考えられます。もし商品を送り付けてきた先が宝石の通販サイトだった場合、そこに「すばらしい本物の商品を安く買えました。ありがとうございます!また購入します」など多数の高評価を書き込めば、それを見た多くの人は、そこで宝石などを購入するでしょう。
しかしながら、購入者が注文しても送られてくる商品は、偽の宝石や今回のように種だったりするかもしれません。あるいは、そもそも商品を送るつもりもなく、クレジットカード情報を抜き取るのが目的の偽サイトの可能性もあります。つまり、種というコストのかからないものを送ることで、購入者から高額な金を騙しとろうとするわけです。信頼できるサイトだと思われるために、謎の種の商品を送った。そうした可能性はあります。
しかし疑問も残ります。ブラッシング詐欺を行うのであれば、これだけ全米やヨーロッパに大量に商品を送る必要はないからです。ある程度の数で、十分なはずだからです。日本にも数多く送られてきています。
可能性1「送り付け商法」
私は送られてきた商品の写真を見て、ある詐欺の可能性が高いと考えます。それは送り付け商法です。
日本でも注文もしていない商品を送り付けて、請求書を入れておき、慌てて電話をかけてきた人を騙して、金を払わせようとします。ただし今回の郵送物には、請求書はないようですが、袋には電話番号が書いてあります。宝石やイヤリングと書いてあって、種が入っていれば、宛先や商品を入れ違えたのかもしれないと思って、心の根の優しい人ほど電話をすることでしょう。
つまり、この番号に電話をかけさせるのが目的の可能性が極めて高いのです。
もし「間違って商品が届いたよ」などと電話をすれば、詐欺師のオペレーターが出て、代金を請求されるかもしれません。袋にはグラム辺り1.5ドルとか、5ドルとか比較的安い値段が書いてあります。電話をした人も強い口調で支払を求められて「その位なら、良いか」と、払ってしまう人もいるでしょう。
数多くの人に商品を送り、少額を詐取する。これは詐欺でよくみられる手口です。
皆さんのところにも「数千万円の遺産を差しあげます」という迷惑メールが送られてきたことがあるかもしれません。それを見て、「嘘つくなよ!」「ありえない」と削除する人がほとんどですが、中には「本当にもらえるかもしれない」と思って、サイトにアクセスしてお金を払う人はいるのです。実は、こうした人が1%いれば良いと詐欺師は考えます。もし100万人にメールをおくって、その1%である1万人がサイトにアクセスして、1000円分をプリペイドカードで払ったとしましょう。そもそもメールを送るのにはお金がかかりませんから、業者は1000万円の儲けとなるのです。
今回の謎の種も同じで、大量に送ってそのなかの何人かがお金を払ってくれればよいという考え方です。全世界の1億人に種を送って、もし1%の100万人が1.5ドル(約150円)を払ったとすれば、1億5千円のお金を手にできます。5ドルであれば、5億円です。大量に送ると郵送費はかかりますが、種という低コストのものを送ることで、充分に儲けを出せるわけです。