はじめに

改正で繰り下げは75歳まで拡大、最大84%の増額になる

改正により、繰り下げによる受給開始時期の上限は70歳から75歳へ引き上げられました。繰り下げによる増額率は月当り0.7%と現行通りです。

年齢が引き上げられたことによる増額効果は2倍になります。70歳での増額率は42%(0.7%×60ヶ月)ですが、最長75歳まで可能となることで84%(0.7%×120ヶ月)増額になります。

たとえば国民年金(老齢基礎年金)を満額受け取る場合、65歳時点での満額78万円に対して75歳まで繰り下げると143万5,200万円まで増やすことができます。概ね87歳時点で、繰り下げ受給の累計額は65歳からの累計額を上回ります。女性の平均寿命辺りが損益分岐点と言えます。

繰り下げ受給の注意点

繰り上げ受給と同様に繰り下げを検討する時にも他の制度への影響を考慮する必要があります。それは、年金の配偶者手当とも言われる加給年金への影響です。

加給年金は20年以上厚生年金に加入していた人が上乗せで受け取る年金です。支給には、年下の妻を対象など一定要件がありますが、年間約40万円の支給額になるケースもあります。

繰り下げをすることで年金額を増やすことはできますが、加給年金は増額にはなりません。さらに繰り下げた期間については支給自体が無くなります。歳の差がある夫婦の場合には影響が大きいため注意が必要です。

70歳以降に請求する場合の5年前時点での繰下げ制度の新設

最後に2023年4月施行の新しい制度をお伝えします。例えば73歳時点で繰り下げをしないで受け取る場合の年金額はどうなるのかみてみましょう。

・5年前の68歳時点での受給額を受け取る(25.2%の増額)
・68歳から73歳までの5年分の年金額を遡って一括で受給する

本来受け取るはずだった65歳から68歳までの年金は時効消滅となります。ただし25.2%増額した年金額を5年分一括で受け取れるのでまとまった金額にはなります。

以上、改正による年金受給への影響をお伝えしました。正直なところ、寿命を予想することはできませんが、ベターな判断をしたいところです。

そのためには、資産状況や年金見込み額を確認すること、60歳以降厚生年金に加入してなるべく長く働き年金額を増やすことなど合わせて考えてみましょう。

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