はじめに

バイデン候補が大統領になると株価はどうなる?

現状、トランプ大統領とバイデン候補の支持率は、一部の世論調査が示唆するほどの差は開いておらず依然として事実上僅差で、双方の勝利の可能性がそれぞれ50%程度あると筆者は現時点で見ています。どちらが大統領になってもおかしくないですが、仮に、減税によって民間の経済活動を主軸に経済成長率を高めてきたトランプ政権に代わり、バイデン政権となれば公的部門の肥大化とともに政府による経済活動への介入が強まるとみられます。

まず、バイデン候補が掲げている法人税引き上げが実現すれば、企業利益を押し下げ株式市場に無視できない悪影響が及ぶでしょう。更に、民間企業への介入政策の一環として、「儲けすぎ」との批判に直面している企業への規制強化が予想され、これまで米国の株高を支えてきた企業への逆風が吹きます。更に、所得再分配政策が再び強化される一環としてキャピタルゲイン税の引き上げが予想され、これも株式市場の悪材料になります。

コロナ禍の下での米国の株高が、トランプ政権が主導した強力な財政金融緩和によって実現していたため、バイデン氏が勝利して民主党が議会を制すれば、特に少数のハイテク関連株が牽引して上昇していた米国の株式市場にとって、大きな逆風になると筆者は警戒しています。

このため、追加財政協議を巡る共和党と民主党の協議などの最近の報道はあまり重要ではなく、むしろバイデン候補、トランプ大統領のどちらが大統領になるかの政治情勢の変化が、株式市場を考える上でより重要な視点と言えるでしょう。

そして、8月11日には民主党の副大統領候補としてカマラ・ハリス氏の起用が決まったと報じられました。ハリス氏は一番の本命と見做されており順当な結果ですが、大統領候補であるバイデン氏の弱みを補うことができる副大統領候補と言えます。

2016年の大統領選挙敗戦で失敗した民主党は今回は一丸となってトランプ政権に対峙できる体制を整えたという意味では、バイデン大統領誕生の可能性を若干ながらも高めたと評価できるでしょう。

S&P500指数は最高値圏まで順調に上昇してきましたが、大統領選挙が本格化する中で、参加者の心理が揺れ動く場面が秋口にかけて増えると筆者は予想しています。

<文:シニアエコノミスト 村上尚己>

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