はじめに
2022年より繰下げ受給が得になった?
「2022年4月より在職老齢年金が引き上げられるので、繰上げ受給の好機」などと書いてあるWebの記事を見ました。これは、本当に繰上げ受給をすると得になるのでしょうか?
2022年4月の繰上げ受給に関係する改定は、繰上げ受給の減額率の変更と、在職老齢年金の減額基準の引き上げです。繰上げ受給の減額率が月あたり0.5%から0.4%になったので、減額される金額が少なくなりました。それに在職老齢年金は、給料と年金が47万円を超えないと減額されません。
これで、繰上げ受給をしても、年金の支給停止ということは、それほど心配しなくてもよくなりました。
繰上げ受給を勧めない理由とは
60歳まで繰り上げたときの損益分岐点は約81歳です。81歳だったら、男性の平均寿命を同じくらいだから、損をしないのではと思ってしまいます。だからWebの記事の中には、「繰上げ受給の好機」なんて書いている人がいるのです。
では、本当に繰上げ受給をするのが得なのかというとそうではありません。下記のことについても総合的に考えてください。
・給与が多い人、特別支給の老齢厚生年金を受け取っている人は、在職老齢年金の基準額に注意してください、せっかくの年金が支給停止になります。
・障害年金が受け取れません。この間はたとえ数年であっても、何が起こるかわかりません。そのための保険の機能が備わっているのです。
・平均寿命を超えているからOKというわけではありません。平均余命で考えると、約84歳です(令和元年簡易生命表)。また男性の4人に1人は90歳まで生きます。また、85歳になる20年後には、もっと平均寿命が延びているかも知れません。年金とは長生きしたときの保険なのです。
・一度、繰上げ受給をするとキャンセルはできません。年金を増やすことが不可能になります。
などという理由から、どうしても、生活ができないという場合以外は繰上げ受給はお勧めはしません。年金は長生きをしたときの保険ですから、むしろ、繰下げ受給を検討をするようにした方がいいのです。