はじめに
住宅購入のお得度を検討する際の3つのポイント
先行き不透明な中、家をどうするかについては、悩むところでしょう。ご相談者さんもおっしゃっているように、全ての条件を満たす物件はありません。物件の質もエリアも求めれば、家賃が高くなりますし、家賃を重視すれば、物件の質やエリアを妥協することになります。まずは、何が一番の優先事項なのかをご夫婦で明確にすることが必要です。
都内の賃貸物件の場合、エリアや広さ、駅からのアクセスなどにこだわると、ご相談者さんがおっしゃるように、どうしても月に20万円以上の家賃は覚悟しなくてはならないでしょう。
では、いっそのこと、同じようなクオリティの物件を購入するということも選択肢に上がると思いますが、賃貸と購入ではどちらがお得なのでしょうか?
家を購入するのが良いのか、賃貸の方が良いのかは、昔からよく議論されるところですが、実際のところ、(1)これから先、何年生きるかがわからない(2)将来の住宅価格がどう動くかがわからない(3)マイホームに対しての価値観が人によって異なるのでどちらがお得かは、一概にはいえません。
マネー面からのお得度は、賃貸と購入ではほとんど差がない
参考までに、ざっくりした試算ではありますが、お金の面から賃貸と購入のお得度を比べて見ましょう。例えば、「賃貸で家賃20万円、3LDKの場合」と「広さなど条件が同程度の3LDK、物件価格5,500万円」の場合を考えてみましょう。購入の条件は、ローンの期間を35年、金利1%、頭金1,100万円(物件価格の2割)とします。
【賃貸の場合】
敷金40万円、礼金20万円、家賃(35年)8,400万円、更新費用(2年に1度)340万円。合計8,800万円。
【購入の場合】
頭金1,100万円、諸経費(物件価格の7%と仮定)385万円、毎月のローン(35年)約5200万円 、管理費・修繕積立金(35年)1,260万円、固定資産税(35年)400万円。合計8,345万円。
一見すると、購入の方が若干安いですが、建物が古くなったらリフォームなどのメンテナンスをする必要があります。また、今は住宅ローンの金利が低いから返済額が少なくなっているということもありますし、頭金の金額などによっても変わってくるでしょう。いずれにせよ、マネーの面からみると、そんなに大きな違いはないということです。
ですから、大切なのは、自分のライフプランの中で「住宅」をどう活用したいのかです。いつ、誰と、どんな風に暮らすのか、「現役時代」「定年後」「介護が必要になったら」と人生を3タームに分けて考えてみると、プランニングしやすいでしょう。
無理のないローン返済はどれくらい?
では、仮に家を購入するという選択をした場合の注意点についてお話します。
ご相談者さんも心配しているように、お子さんが生まれた場合、今と同じように働けない可能性が高いですし、今後、コロナの影響が長期化すれば、収入が減少する可能性も高いでしょう。とすると、大切なのは、家計を圧迫しない住宅ローン返済のプランを組むことです。
現在、ご夫婦の年収を合わせた世帯年収は、1,300万円とのことですが、今後の状況の変化なども考え、手堅く見積もり、世帯年収が1,000万円程度になったと想定して考えてみたいと思います。年収1000万円程度というと、手取り年収にすると、700万円程度。月額にすると60万円程度になります。
一般的に住居費用は、手取り金額の25%以内に収めるのが理想といわれていますが、都心部のマンションの場合、価格が高いので、35%以内までは許容範囲とします。
5500万円の物件で試算すると
仮に上記でお話しした5,500万円の物件を頭金200万円(現在の貯蓄額から手元資金として残しておいた方が良いお金などを考慮した結果)、金利1%で35年間借りた場合、毎月のローンの返済額は、約14万9,000円。マンションの場合、管理費・修繕積立金が加わるので、2.5万円程度を加えると、毎月約17万4,000円程度支払うことに。住居費用の家計に占める割合は29%程度です。
では、実際、金融機関がどれくらいの金額のローンを貸してくれるのかですが、一般的に金融機関が住宅ローンとして貸してくれる金額は、「年収負担率(総返済負担率)」で35%まで(年収400万円以上の場合)。この年収負担率というのは、年間のローン返済の総額を税込年収で除した金額のこと。ただし、実際には、年収負担率35%まで借りられるのですが、家計を圧迫しないラインで考えると、年収負担率は25%以内に抑えたいところです。
年収1000万円の場合、年収負担率が25%だと、年間のローン返済額は240万円程度になります。月額にすると、20万円程度ですから、上記の試算は、年収負担率からも妥当と言えます。
今回はざっくりとした試算ですから、実際に家を購入するとなった場合には、頭金や返済方法、返済期間、金利等、様々な側面からシミュレーションして、家以外の教育費や老後費用なども貯蓄できる余裕があるか、家計が破綻しないかなど、確認することが大切です。