はじめに

誰でもハードな仕事は嫌なもの。できるだけ負担が少ない仕事を選びたくなるのが人情でしょう。しかし、これは幸福度という点から見れば大きな間違いです。過度のストレスが体に悪いのは確実なものの、その一方では「楽すぎる仕事」もまた、あなたの幸福度を大きく下げてしまいます。前回前々回に引き続き、『科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方』(クロスメディア・パブリッシング)から一部抜粋して紹介します。


適度なストレスは、仕事の満足度を高める

過去に行われた複数の研究が、会社内で高いポジションに就いたエグゼクティブほど健康で幸福度が高い事実を示してきました。彼らは周囲の部下よりもあきらかに仕事の量が多いにもかかわらず、風邪や慢性病などにかかりにくく、日中の疲れを感じずに活動できていたのです。

さらに3万人の公務員を対象にしたイギリスの研究によれば、組織内で地位のランクがもっとも低い人は、ランクが高くより重大な仕事を行う人に比べて死亡率が2倍も高かったのだとか。

これは人間以外の種族にも見られる現象で、ケニアのサバンナで暮らすバブーン(サルの1種)を調べた研究でも、仕事の少ない個体ほどストレスホルモンの量が多い傾向が確認されています。

どうやら、仕事の負荷が低いからといって必ずしも精神的に楽になれるわけではないようです。

それでは、ハードワークで体を壊す人がいる一方で、大量の仕事をこなすことで逆に幸せになれる人がいる理由はどこにあるのでしょうか?

「船荷のない船は不安定でまっすぐ進まない。一定量の心配や苦痛は、いつも、誰にでも必要である」
このショーペンハウアーの名言は、楽すぎる仕事が体に悪い理由の一端を示しています。ストレスは必ずしも悪いものではなく、私たちが幸福に暮らすためには欠かせない要素だからです。

たとえば、アメリカで軍事戦略のリサーチなどを行うランド研究所は、過去に出た大量のストレス研究をレビューしたうえで、「適度なストレス」がもたらすメリットを3つあげています。

・仕事の満足度を高める
・会社へのコミットメントを改善する
・離職率を低下させる

ほどほどのストレスであればなんの問題もないどころか、逆にあなたの幸福感を高めてくれる、というわけです。
この現象を視覚化したのが次の図です。

あまりに自分の能力を超えた仕事は不安につながり、あなたの健康を損ないます。逆になんの負荷もない仕事は退屈感を生み、やはり幸福度の低下をもたらします。