はじめに

不動産投資を検討

私がポートフォリオ運用を始めたのは30歳を過ぎたころです。老後までの資産形成を考えると30年ほどの期間があります。当時は金融機関に勤めているため株式投資に制約がかかっていることもあって、長期的なインカムを得ることができる債券と不動産を積極的に資産に組み入れることにしました。

保険会社の不動産運用はビルの所有が多く、大きな資金を用意できない個人投資家が実践することは不可能です。個人ができる賃貸用不動産投資には区分(マンション)、戸建て、一棟ものが一般的で、不動産投資の本を読むと「一棟をやるべき」と書いているものが多い印象がありました。一棟ものは木造のコーポからRC(鉄筋コンクリート造)のマンションタイプがありまして、これを「金融機関からお金を引っ張れるだけ引っ張って購入を繰り返すことがお金持ちへの近道」と書いてあります。「○×億円借り入れがあり△億円の家賃収入があります」とレバレッジをフルに効かせた大家さんが武勇伝のごとく登場していました。

この手法は株式市場と同じく、大きくうまくリスクを取った人が勝つ可能性が高いのは理解できます。しかし、入居者の動向で大きく収支が左右されてしまい、最悪破産する可能性もあります。

ディーラー時代にも

また、債券ファンドマネージャーとしてリーマンショック時に目にした光景も印象に残っています。金融市場は混乱を極め、リスクが高い資産はもちろん、リスクの低い資産まで換金売りにさらされるのを目の当たりにしました。また、不動産会社も多数倒産、ニューシティ・レジデンス投資法人など経営破綻するREITも出てきました。

これを見ていたため、私は不動産投資に一歩踏み出せずにいたのは事実です。それでも、次第にインカム資産への興味が出てきたため、ポートフォリオに不動産も組み入れることにしました。

不動産はお金を借りて運用ができるほぼ唯一の投資商品です。私の当時のポートフォリオには資産しかなく、負債がありません。日本はいまだに無借金企業が素晴らしいという考えがありますが、世界の主流は負債と資本の効率化して事業を行うことが良い経営とされています。

個人の運用でも資本だけでなく、バランスよく負債を持つことにより運用の厚みが出ます。バランスよく、というのがポイントです。投資実践に移る人がレバレッジのコントロールができず前述の一棟物件を多額の借り入れで行ってしまうのはバランスを崩すことになります。

多額の借り入れを行わず、自分の給料や資産の中でやりくりできる金額であれば大きな資産の増加は見込めませんが、入居率が下がってしまっても返済に困ることはありません。

今回は株の投資家から見た不動産投資の特徴について説明しました。次回から、具体的にどのような物件を買い進めたかどうかをお話ししていきましょう。

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