はじめに

前遺言の記載を除くこともできる

続いて、前遺言の記載を除くことで対応ができる例もご紹介します。

【遺言:前遺言を除く記載】
遺言者は、下記預貯金を含む、令和〇年〇月〇日付〇〇法務局公証人〇〇作成の令和〇年第〇〇号遺言公正証書記載の財産を除く、その余の一切の財産を遺言者の妻、長男及び二男に均等の割合で相続させる。

このような記載にすることで、自社株式を含まずに追加で遺言の作成をすることが可能になります。この場合、以前にも遺言書を作成していたことが明確になりますので、前遺言を作成していることを知らせたくない場合などに使用することはできません。「こんな遺言を作成したい。」という相談だけで遺言の作成に入ってしまうことは、最終的にご相談者の想いや願いを叶えられないだけでなく、相続そのものを複雑にしてしまうことがあります。「なぜ、遺言をしたいのか」ということをご本人からお話頂くこと、そして専門家もこのような内容の聞き取りを行うことが重要です。

今回のケースでは、遺言を追加で作成したいという想いがありましたが、やはり全ての遺言を書き替えるほうがシンプルで間違いが少ないでしょう。そのような場合、下記のような内容になります。

【遺言:遺言の全文撤回】
遺言者は、令和〇年〇月〇日付○○法務局公証人○○作成の令和〇年第○○号遺言公正証書記載の遺言を含む、本遺言より前にした遺言を全て撤回し、改めて以下のとおり遺言する。

このような記載を行うことで、前遺言が何通あったとしても全てを撤回したことになります。

相続対策に重要なことは、遺言書の作成や各種契約書の作成をすることではなく、想いや願いを叶えることです。また、想いや願いの本質を知ることも大切です。それぞれのご家庭、財産の状況を考え、真の目的を明確にすることが生前対策において重要なことなのです。

<行政書士:藤井 利江子>

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