はじめに

「前の遺言が後の遺言と抵触するとき」とは?

今回のケースでも追加の遺言(2つ目の遺言書)を作成する際に、この言葉が入っていました。相談をしていた専門家や公証人に自社株式についての遺言があることを信二さんが伝えていなかったのか。ご自身ではこの言葉の意味が分からず追加の遺言を作成してしまったのか、理由はわかりません。しかし、現実としてこの言葉の記載がある遺言を作成していました。

改めて、民法条文を確認してみましょう。条文には「前の遺言が後の遺言と抵触するとき」とあります。つまり「その他一切の財産」には、自社株式も含まれることになるのです。これにより、不動産は妻へ、預貯金とその他一切の財産(自社株を含む)は均等の割合で相続されることとなってしまいます。

このように、遺言の作成、修正、追加といっても、内容は多岐に渡ります。遺言者が想いや願いを叶えるためには、以前に遺言を作成したことがあるのか、もし、作成したことがあるのなら、どのような内容で、何のために作成していたのかなどを考慮することが必要です。専門家へ相談をする場合は、このような内容も伝えるようにしましょう。

「前の遺言が後の遺言と抵触するとき」とは?

それでは、今回のケースでは、どのような遺言書の内容の提案を行ったのか。いくつかの例をあげてご紹介します。

遺言で「その他一切の財産」という記載を行うことで、前の遺言に抵触してしまいます。そのような場合、自社株式に影響がないよう限定的に記載をすることが有効です。

【遺言:その他の記載】
遺言者は、下記預貯金を、遺言者の妻、長男及び二男に均等の割合で相続させる。
(1) ○○銀行 ○○支店 口座番号:○○○○
(2)○○銀行 ○○支店 口座番号:○○○○
(3)その他遺言者名義で契約する金融機関全部

 この例では、(3)記載の財産を『金融機関全部』と限定しているため、自社株式に影響がでることはありません。このような記載をどこまでするのかは、その方の財産状況がどのように変化する可能性があるのかで検討をする必要があります。有価証券を所有していて、その内容が変化する可能性があれば「その他遺言者名義で契約する証券会社全部」となるかもしれません。また、不動産が増える可能性があれば「その他遺言者名義で所有する不動産全部」となるかもしれません。これらは、遺言者の財産状況を把握し、ご意向についての聞き取りがきちんとできているからこそ可能になるのです。