はじめに

今はとかく「失敗」を許さない風潮があります。特に日本ではSNSでうかつな失言をすれば炎上し、場合によっては「失敗」「失言」をきっかけに当事者が死を選んでしまうケースまで。失敗は確かに失敗。しかし、「失敗=絶対悪」の空気はとても息苦いものです。

長い歴史を振り返ると、当初は「失敗」だったものの、後に強い影響力を持つようになった例は数多くあります。特に文房具のジャンルで有名なのが3Mの「ポスト・イット® ブランド」。世界中に「付箋」を広めた商品ですが、実は、接着剤開発中の「失敗」から生まれたアイデアによって大成功に至った製品です。®

失敗を大成功に導いたポスト・イット® 製品のヒストリーを、スリーエム ジャパンでマーケティングを担当する坪井壘(るい)さんにお聞きします。


「失敗」の連続から転じられた数々の製品

―粘着式付箋の元祖のポスト・イット® 製品ですが、「失敗」製品が転じられ生まれたようですね

坪井 :はい。はじめに、3Mのカルチャーからお話をさせてください。「失敗」をアイデアで転換、1つのアイデアを次のアイデアや用途の結び付けることで成長したのが、3Mです。ですので、弊社には「失敗だと思うものでも、別の見方をする」「そうすればとんでもないオポチュニティ(好機)が隠されているかもしれない」という考えが、今日まで受け継がれています。

そうしたカルチャーがあったからこそ誕生したのが、ポスト・イットⓇ 製品です。実は、強力な接着剤開発中に偶然出来てしまった「よくつくけれど簡単に剥がれてしまう」という奇妙な試作品が原点となっています。

postit_023Mの総支配人であり、中興の祖とも呼ばれるウイリアム・マックナイト。「誤りは起きる。しかし、それを犯した者が基本的に正しいのなら、長期的に見てその者が犯した誤りは、それほど重要ではない」という名言を残した(写真提供:スリーエム ジャパン)