はじめに

委託製造が弱み?

3について、現在中国政府は新エネルギー車の新規参入メーカーに対して、自動車の生産資格を取得するように義務付けています。同社は創業してから経過年数が短く、政府が定める要件を満たしていないため、自社でEVの設計と開発のみを手掛けて、提携先の江淮汽車に製造委託する方式を取っています。

この方式は、EVが急速に普及する局面において機会損失を防ぐことができる一方、テスラなど自社生産のEVに比べて製品の信頼性や完成度などの点で見劣りしています。現在、同社は市場シェアの拡大を優先して製造の外部委託を続けていますが、今後新設や買収などを通じて自社工場を持つ可能性があります。

中国の新興EV3社とテスラとの比較

独特な動力システムを採用する理想汽車

理想汽車は、自動車情報サイト「オートホーム」の創業者である李想氏が2015年に設立したEVメーカーで、2020年7月にナスダック市場で株式上場を果たしました。同社が現在販売しているモデルはSUVタイプの「理想ONE」のみですが、主な特徴としては「レンジエクステンダー」という走行距離を伸ばす装置を採用していることが挙げられます。

「レンジエクステンダー」はモーターに取り付けるガソリン式の発電装置を指しており、この装置はバッテリーによる走行時は稼働しませんが、バッテリーの残量が少なくなるとガソリンで発電してEVの走行距離を伸ばすことができます。そのため、「理想ONE」の走行可能距離は800kmと一般的なEVの約500kmに比べて優位性があります。

また、同社は2018年に力帆汽車の買収を通じて自動車の生産に必要な資格を手に入れ、2019年後半から江蘇省の自社工場で「理想ONE」の量産を開始しました。理想汽車は蔚来汽車に比べて、ブランド戦略にあまり時間をかけなかった分、新興3社の中で最も早く自社工場で量産に入ることができ、今年に入ってから急速に納車台数を伸ばしています。