はじめに

大衆車市場に照準を合わせる小鵬汽車

小鵬汽車は、ウェブブラウザ「UCブラウザ」の創業者である何小鵬氏が2015年に設立したEVメーカーで、2020年8月にニューヨーク市場で株式上場を果たしました。同社は現在SUVタイプの「G3」とセダンタイプ「P7」の2モデルを販売しており、EVの価格を低めの抑えることで大衆車市場に照準を合わせています。

7月23日以降、中国では新エネルギー車の購入補助金の支給対象が30万元(約470万円)以下のモデルに限定され、これに伴ってテスラは補助金を受けられるようにモデル3の値下げを実施しました。小鵬汽車の「G3」と「P7」は補助金適用後の価格はそれぞれ14.7万元と23万元とお手頃感があり、このうち「P7」の価格は競合のモデル3よりも安く設定されていることから、大衆車の分野で消費者から一定の支持を得る可能性があります。

また、EVの製造において、同社は「G3」と「P7」の製造を提携先の海馬汽車に委託する一方、2020年に福迪汽車を買収して自動車の生産に必要な資格を手に入れました。その後、広東省の自社工場で「P7」の量産を開始し、自社製造に舵を切り替え始めています。

中国版「テスラ」が生まれる可能性も

現在、中国ではEV大手のテスラとBYDに加え、従来のガソリン車大手も次々と新エネルギー車を投入しており、競争が非常に激しくなっています。その中で、中国の新興EV3社はいずれも先行投資の段階にあり、売上高を上回る大幅な赤字を出すなど今後事業の持続性に不安感が残っています。

しかしながら、3社は独自の戦略で市場から高く評価され、成長期待も強いことから、今後の事業展開によっては「中国版テスラ」のような成長ストーリーが期待できるかもしれません。

<文:市場情報部 アジア情報課長 王曦>

この記事の感想を教えてください。