はじめに

中国の新興企業が生み出す技術やサービスに、世界の先頭を走るようなものがあると報じられる機会が最近、増えてきました。

先日、日本進出を決めたシェア自転車のMobikeや、QRコード経由でどこでも支払えるAlipayやWeChat PayといったITサービスに加え、ドローンの世界シェアNo.1であるDJI、電気自動車の世界的大手BYD、さらにスマホ販売によって日本でも知名度が上がってきたファーウェイなど、高い技術力が求められるハードウェア方面でも、中国企業の発展は目覚しいものがあります。

そして今、「新技術+サービス」で次なる革新として話題になっているのが“無人コンビニ”です。

以前は人件費が安かった中国も、とくに都市部においては日本を越えるほどの水準となる業種もあり、その圧縮が課題になっています。加えて、人材の質にばらつきがあり転職も頻繁なため、時間や費用をかけて従業員を教育するのではなく、システムや機械にできるだけサポートさせることがトレンドに。この潮流に乗って、ブームになりつつあるのが無人店舗なのです。


上海に開店「Bingo Box」が火付け役

話題のきっかけは6月5日、上海の、とあるスーパーの駐車場に完全無人のコンビニ「Bingo Box」が開店したというニュースが中国の大手メディアに取り上げられたことでした。

この店は、米アマゾンが昨年末に発表した「Amazon Go」のコンセプト映像を「中国の中小企業が本家よりも早く実現した!(Amazon GOはいまだ従業員向けの試験営業段階)」と、一気に注目されたのですが、盗難防止に全面ガラス張りの店舗は連日、35度以上が続く上海の酷暑と日差しに耐え切れず、残念ながら1ヶ月も経たないうちに閉店してしまいました。

7月14日には調整を終えて再度開店したものの、今度は地元警察が「店舗としての営業許可に疑義あり」と立ち入り検査を行うなど、前途多難な様子です。

しかし実は上海から遠く離れた広東省中山市に、すでに約1年営業中の店舗があると判明したため、今回は実際に訪れてみました。ちなみに上海市と中山市は直線距離にして1,200km、日本の地理に当てはめると仙台と鹿児島ぐらい離れています。

営業中の店舗を求め、広東省中山市へ

マカオから車で1時間半程度、中国建国の英雄である孫中山(=孫文の号)から名前をとった中山市は比較的、物価が安いことに加え、水郷地帯で緑も多く、海鮮や鶏・ハトなど新鮮な素材を使った広東料理が口に合うとして、交通アクセスの悪さにもかかわらず、日本人が多く住むと言われています。

無人コンビニ「Bingo Box」は、市中心部から車でさらに30分ほど行った高級団地の敷地内にありました。

入店は簡単。扉の横のQRコードを中国で最も普及しているSNSアプリ「微信(WeChat)」で読み取り、出てきた画面に電話番号を入力。そして届いたSMSに記載されているパスワードを入力するだけ。手順が完了すると「ドアが開きます」の音声案内とともにロックが解除され、入店できるようになります。また同時に携帯画面には商品の買い方も表示されるため、非常にわかりやすい印象です。

外から見た通りコンパクトな店内は、明かりがないために薄暗い雰囲気。店内に並んでいるのは主に菓子類や常温保存が可能な即席めん、調味料など。奥に設置されている冷蔵庫の中にはお茶やジュースがありますが、よく見ると一般的なコンビニに幅を利かせるコーラなど有名ブランドの商品はありません。

物は試しと、ウーロン茶を買ってみました(ちなみに日本の某ブランドととてもよく似ていますが違う商品です)。価格はネット上で見つかるのとほぼ同水準。運営会社は「コストが低いので小売価格も下げられる」とうたいますが、これは商品によるのかもしれません。

入店時に携帯に送られてきた情報、そして上部のディスプレイでも常に手順を説明してくれているため、購入時にレジで迷うことはありません。

商品を左の黒い識別エリアに置くと、右側の画面には自動的に価格が表示されます(1回の会計で商品5点まで)。現金払いには対応しておらず、Alipay、WeChat pay、またはBingo Box独自のアプリ経由での支払いとなります。

「RFID」と呼ばれるタグが商品に直接貼り付けられているため、決められた場所に商品を置けば自動的に読み取られるシステムで非常に便利です。退店する際には、出入り口に立ち、センサーが清算終了を確認すると、鍵が開いて外に出られるようになります。

このBingo Boxの運営会社は7月3日、1億元(≒16.5億円)のシリーズA投資を獲得し、「今後1年間で5,000店舗を開設する」と宣言しています。また同様に無人コンビニを開発している「F5未来商店」も同じく7月、3,000万元の投資を獲得しました。

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