はじめに

積極採用を行っているのは、「トランスフォーメーション」に取り組む企業

では、意欲的に採用活動を行っているのはどんな企業なのでしょうか。注目すべきは「事業戦略」にあります。「モノ・サービスを売る」だけの事業活動から、「顧客体験を最大化する」「購入後の満足度を高める」戦略へのシフトです。この転換を積極的に行おうとする会社に採用ニーズがあります。

そのような戦略の中心に置かれているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。デジタルを活用したビジネスモデルやサービスの開発、あるいは業務オペレーションの変革により、製品・サービスの「あり方」を変えようとする動きが活発化しています。

例えば、ホームセンターがECモールを展開したり、インテリア企業がアプリで家具の配置イメージを描ける3Dシミュレーターを導入して、顧客の購買体験を増やすといったものです。

「顧客体験」をアップロードしていくことは、どんな業種・企業にとっても避けて通れない課題です。こうしたDX推進を背景に、ITエンジニア、デジタルマーケティングなどの人材は非常にニーズが高まっています。

異業種・異職種への「越境」転職が増加

DXというと、IT・インターネット業界の経験者だけに転職チャンスがあるように思われるかもしれませんが、そうではありません。

現在、「カスタマーサクセス」という部門・職種の求人が増えています。従来の「カスタマーサポート」とは異なり、顧客の自社製品・サービスへの価値評価(満足感)を最大化し、利用の継続につなげることをミッションとする組織・職種です。

求められているのは「製品・サービスの特性」「マーケット」「顧客」を「知っている」ことです。それらの知見・スキルを活かせば、先進的な取り組みをしている企業に転職するチャンスがあると言えるでしょう。

そして、皆さんにぜひ知っておいていただきたいのは、「異業種・異職種」への転職可能性が広がっているということです。企業が、「トランスフォーム」の取り組みに際し、自社にはない知見・スキルを持つ人材を外部から採用しているためです。

近年、リクルートエージェントを介した転職決定者のデータを見ると、同業種・同職種へ転職した人は2割強にとどまり、約8割の人が業種・職種を「越境」しています。そのうち業種・職種ともに異なる領域へ越境した人も3割以上に達しています。

3_リクルートキャリア【転職決定者データから見る】2020 中途採用市場 より抜粋リクルートキャリア【転職決定者データから見る】2020 中途採用市場 より抜粋

実際、異業種・異職種への「越境転職」を実現した方の事例をご紹介しましょう。

事例:生命保険会社の支社長から食品メーカーの品質管理部門長へ

生命保険会社で、支社長として主に営業メンバーを統括してきたAさん(50代)が、食品メーカーB社に品質管理部門のトップとして迎えられました。

B社にはもともと技術的側面での「品質保証」の専門家はいましたが、「製造スタッフのチームワーク、モチベーションも品質に影響する」と考え、チームビルディングやモチベーションマネジメントのプロ人材を募集したのです。

B社の製造スタッフは女性が中心。Aさんは生命保険会社で女性営業メンバーをマネジメントしていたため、その経験が買われ、採用に至りました。

このように、業界・職種を越えて持ち運べる「ポータブルスキル」を活かすことで、思いがけない業種・企業に活躍の場を見つけられるケースもあります。

トランスフォームしようとしている企業が増えているこの時代においては、個人もまた、同様に変化を受け入れる姿勢が必要です。新しい領域で新しいスキルを身に付けることで、今後のキャリアの選択肢が広がるでしょう。

投資管理もマネーフォワード MEで完結!複数の証券口座から配当・ポートフォリオを瞬時に見える化[by MoneyForward HOME]