はじめに

一体何をしたのか

チームは、社内アンケートを取って育休取得における不安要素を聞き取り、個別に対象となる男性社員に、「育休取りませんか」と積極的に声がけを行いました。

アンケートの結果、社員とその妻の多くが危惧していたのは、「育休を取ったらお給料がもらえなくなる」ということ。そこで育休中の給付金を計算できる独自のシミュレーションツールを作成。「金銭的な問題はない」と実感してもらいました。

さらに、グループ全体で対象者とその上司への説明会を実施し、育児休業を取得しやすい雰囲気を作り出しました。社内のイントラネットに「育休専用ページ」を開設。「男性育休のすすめ」という資料を掲載し、取得手続きのマニュアルやQ&Aなどを伝えました。

同社の経営戦略部情報企画課の庄境大貴さんは、推進チームが女性を中心に作られたことが大きかったと言います。「メンバーが女性中心で活発な意見交換が行われたこと、女性ならではの柔軟な思考や新しい考え方を積極的に採用し、型にはまらない仕事の進め方を推進したことが短期間で結果を生むことに繋がりました」と振り返りました。

本人だけでなく同僚も働きやすくなる仕組み

11月に行われた「イクメン推進シンポジウム2020」で、静岡県立大学の国保祥子准教授は「男性育休を業務や職場の改善にまでつなげている素晴らしい例」だと同社の取り組みを絶賛。

「これほど長期間の不在を前提とすると、業務の属人化の廃止や効率化、後輩の育成が必須となります。製造業ながらペーパーレス化などの業務転換に取り組み、プロジェクト発足から短期間で結果を出しました。男性育休によって当事者だけでなく同僚もその恩恵を受けられるという、職場全体のメリットに寄与したやり方だと思います」と語りました。

中央大学の高村静准教授も、「政策の実効性が高く採用にも活かしています。女性のための子育て推進策ではなく、地方都市でもここまでやれるという力を発揮したことはすごいこと」と感心していました。

男性社員が多い中小企業、古風な地方企業が男性育休を推進していくことは、社会全体が子育てしやすくなることに繋がります。庄境さんは「既成概念に捕らわれないことが重要。男性育休は会社組織と人材育成、業務効率化の面でもプラスに働きます。休暇を取得した社員も子育てを通じて限られた時間の使い方を考え直し、会社にとってメリットは大きい」と話しました。

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