はじめに
「任意加入」で得られる、現役時の保障と老後の収入
海外居住中も任意加入をする場合は、日本に住んでいる場合と同様に、年金保険料を納めることで、「老齢基礎年金」「遺族基礎年金」「障害基礎年金」の3つの恩恵を受けることができます(次の表参照)。
老後の生活資金の備えとなる老齢基礎年金の受給額は、年金保険料を支払った月数に応じた金額になるため、海外居住中も任意加入することで老後にもらえる年金額を増やすことができるのです。もし40年間年金保険料を納めれば、老後は満額の年額約78万円が受け取れると期待できます。
加えて、遺族基礎年金や障害基礎年金で万一のリスクに備えることもできます。一家の大黒柱として働いている人は特に、備えておきたい保障です。
任意加入しないなら保険料の負担はなくなるが…
一方、任意加入をしない場合は年金保険料の負担が発生しないため、そこが魅力と感じる人もいるでしょう。国民年金保険料は、月額16,540円(令和2年度の場合)で、年額だと約20万円近い金額です。もし夫婦で海外居住する場合だと2人分必要なので、少なくない負担になります。
しかし、将来もらえる年金額は、あくまでも年金保険料を支払った月数に応じた金額になります。もし海外居住により20年しか年金保険料を納めないことになれば、老後に受け取れる年金見込み額は、満額の半分となる年額約39万円になります。
そのため、日本の年金に任意加入しない場合は、「居住国の年金制度に加入する」「自分で資産運用する」など、他の方法で老後に備えておく必要があると考えておきましょう。同時に、遺族年金や障害年金といった現役時代の備えを確保するため、保険の見直しも検討する必要があるでしょう。
できれば公的年金の任意加入をしておこう
海外で働くと決めた場合でも、海外に永住しようと固い決意を決めていく人はそう多くないのではないでしょうか。「老後は日本で…」と考えている人はもちろん、そうでない人も、公的年金の任意加入を前向きに検討することをおすすめします。
任意加入をする際には手続きが必要となります。これから海外に転居する人なら、年金手帳を持って、お住まいの市区町村窓口に足を運びましょう。年金保険料は、日本の銀行口座からの引き落とし以外にも、日本国内に居住している親族などが代理で支払う方法などを選ぶことができます。
海外での生活は将来が予想しにくいものです。居住国の生活や年金制度を把握するまでの間だけでも、ひとまず任意加入して一生涯受け取れる老後の収入源を確保しておくことは、安心感にもつながるのではないでしょうか。