はじめに
経営幹部は極力出社しない
会社の中で付加価値を生まない時間をどんどん削っても、生産性が上がらないのはなぜか。それは付加価値を生まない時間をつくる人がいるから。
その犯人は経営者や幹部だ。
優秀な経営者や幹部ほど、社員の余計な仕事をつくる。思いついたことをまわりに言うと、経営者や幹部の言うことだから関心を持たざるをえない。
たまたまエチオピア経済のニュースを見た経営者が、「エチオピアが熱いというが、アパレルは生産しているのか?」と部長に聞く。
部長は忖度して「さっそく調べます」と言って、自分の部下に「明日までにエチオピアで生産しているアパレル業者についてレポートをまとめてくれないか」と仕事を振る。
部下は自分の仕事をいったん止め、ネットでエチオピアのビジネスをリサーチする。結果として、エチオピアは関税面でアメリカにもヨーロッパにも有利に輸出できる有望な産地とわかる。でも会社には差し迫ったニーズはない。なにしろ遠すぎる。
たまたま聞きかじったトレンドの調査を部下に投げるなんて一番やってはいけないことだ。その分、継続的な重要テーマへの時間が削がれる。必要なら部下に振らないで、自分で調べればいい。
そのために、経営者や幹部は現場に行って極力出社しなければいい。
現場で発見したことは長短あるが、どこかで聞きかじったテーマより重要性が高い。
現場には改善と改革のヒントが隠されている。経営者が新しいテーマを出してもいいが、1年で数回程度にすべきだ。それまでじっと我慢してため込む。その間に忘れたら重要性が低い証拠だ。
ワークマン式「しない経営」――4000億円の空白市場を切り拓いた秘密 土屋 哲雄 著
社員のストレスになることはしない。ワークマンらしくないことはしない。価値を生まない無駄なことはしない。「しない会社」が、どのようにブルーオーシャン市場を発見し、客層拡大して業績を上げたのか。どのように自分の頭で考える社員を育てたのか。