はじめに
老後資金を甘く見てはいけない
ご相談者に限らず、「退職金や年金があるから、老後は何とかなるはずだ」と考えている人は意外と多くいらっしゃいます。そういった方は、定年間際になってから、もしくは実際、年金生活に入ってから、生活費が不足していることに気づき、慌ててしまいます。
2019年、老後資金2,000万円問題が注目されました。必ずしも皆さんに2,000万円が必要だというわけではありませんが、退職金や年金で不足する分は、やはりご自分で備えておかなくてはなりません。
ご相談者が年金をもらう頃にはいくらくらいになっているかわかりませんが、男性一人の厚生年金受給額の平均は16万6,000円というデータがあります(厚生労働省「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より)。厚生年金は収入により年金額が異なるので、ご相談者の場合はもう少し多かったり少なかったりするかもしれませんが、1カ月に20万円も手にすることができないのです。
今からできる二つのこと
年金生活に入るころには住宅ローンは完済しているでしょうが、今の暮らし方を続けると、毎月14万円ほどを老後資金から切り崩さないと暮らせません。1年間に切り崩す必要がある金額は168万円。10年生きれば1,680万円、20年生きれば3,360万円です。かなり大きな金額です。これを退職金だけで賄えるのかを、今のうちにしっかりと考えて、老後資金作りを考えていかねばなりません。
そのためにできることは、今から生活費を少なくし、少しでも貯金をしていくこと。そして、貯金ができるようになったら、運用を始めてみることの二つです。特に運用は無理をすることはありませんが、可能であれば始めていただきたいもの。
ではまず、生活費を少なくし、貯金を増やす方法を試してみましょう。
支出記録を費目に振り分けてみよう
現状、一人暮らしとは思えないほど生活費がかかっています。改善につなげるために、継続して、1カ月の支出を費目ごとにまとめてみてください。そうすることで、自分の支出の傾向を知ることができます。
幸い、キャッシュレス決済は支出の記録が残ります。それを振り分けてみるとよいでしょう。手書きが分かりやすくてよいかと思いますが、面倒だと思う場合は「家計簿アプリ」を活用すると良いでしょう。
家計簿アプリはキャッシュレス決済の支出を自動で記録してくれますし、費目の設定をしておくと、費目に分けてくれます。時々間違った振り分けになることもありますが、大まかな支出の傾向を知るには十分です。それを見ながら削減できるところはないかを考えてみましょう。
節約の心構え
絶対に節約、無駄はダメでとにかく我慢をしようという生活を送ってほしいわけではありません。必要な支出はしっかりと払い、そうではない支出は控え、支出にメリハリをつけることが基本です。食費は外食をしなくても、弁当と好きなビールを買って家で食べよう、付き合いは頻度を少し減らそう、そのような感じでよいのです。みんな生きて生活しているのですから、その為に支出してはいけないということではありません。基準なく、なんでもかんでも払うということがよくないのです。選別の仕方を覚えましょう。