はじめに
特殊詐欺は減少傾向にあるが…
警察庁はこのような詐欺を「特殊詐欺」というカテゴリーにしています。昨年から特殊詐欺は更に10種類に分類されており、その中にはオレオレ詐欺や架空料金請求詐欺、還付金詐欺などが含まれています。警察庁が公表しているデータをグラフにしてみました。下図は特殊詐欺の被害総額の推移を表したものです。
(出所):警察庁「特殊詐欺認知・検挙状況等について」のデータをもとに株式会社マネネが作成。
特殊詐欺は、2014年をピークに年々減少しているのが分かります。地上波をはじめメディアでもオレオレ詐欺や還付金詐欺の特集が組まれていますし、最近ではYouTuberが詐欺話を持ち掛けた人をからかうような動画も大量に配信されています。詐欺に引っ掛からなくなった人が増えてきているのかもしれません。
しかし、2010年と比較すれば被害額、件数ともに2倍超となっており、警察庁は「依然として深刻な状況だ」としています。依然として詐欺被害は高水準にあると考えた方がいいでしょう。
また、内訳を見てみると、オレオレ詐欺が減る一方で、キャッシュカードを盗む手口が大幅に増えていることから、オレオレ詐欺のようにその他の詐欺についても警鐘を鳴らし続けるべきと思います。
利殖勧誘事犯の被害は増えている
冒頭に書いたような投資に関する詐欺はもっと深刻です。2019年のデータでは、投資詐欺やマルチ商法などが含まれる利殖勧誘事犯の検挙件数は41件と前年から横ばいでしたが、被害総額は約1,038億円と3倍以上も増加しました。
警察庁は利殖勧誘事犯の例として5つ挙げています。うち2つの例を見てみましょう。
まず1つ目は、投資コンサルティング会社の実質的経営者らが、「海外事業に成功している同社へ出資すれば月利2~4パーセントの配当及び1年後の元本保証を約束する」という虚偽の内容を説明し、全国の約1万 3,000 人から約 459 億円をだまし取った事件。すごい金額です。
2つ目は仮想通貨です。無職の男が仮想通貨(暗号資産)購入金名目で金銭をだまし取ろうと考え、SNSを利用して20歳代を中心に出資者を募りました。受け取った金銭で仮想通貨(暗号資産)を購入するつもりがないのに、「俺は仮想通貨の投資をやっている。」「1か月で2~3倍になる。」「最初に投資したお金は1ヵ月以内に必ず返す。」などとうそのメッセージをSNS等で送信するなどし、7府県の 77 人から約1億 5,700 万円をだまし取りました。
物理的な被害にも気を付けよう
戦時中にも例えられるこの国難の時期に、火事場泥棒を働く無法者は非常に許しがたいのですが、残念なことに物理的な被害も発生しています。
たとえば、「置き配」を狙った窃盗事件。不特定多数の第三者との接触を避けるためにAmazonなどECでの買い物をする人が増えています。配達時に不在だった場合、再配達が面倒なので「置き配」をお願いすることがあります。その荷物が狙われます。
鍵付きの宅配ボックスの利用や、時間指定での配達などを心がけないといけません。また、臨時休業中や営業時間の短縮等を行なっている店舗を狙った窃盗事件も発生しています。
お金を増やすというと投資による資産運用を思い浮かべると思いますが、このように詐欺から自分のお金を守ることも非常に重要です。資産運用、詐欺対策ともに重要なことは、世の中に美味しい話などないということです。ぜひ再認識してください。
「絶対に儲かる」、「絶対に損しない」。このような話はある訳がないのです。美味しい話には目を向けず、しっかりとリスクを低減できるように自己管理を徹底することが求められます。
<文:株式会社マネネCEO / 経済アナリスト 森永康平>