はじめに

コロナ禍で「将来のお金」に不安を感じる人が増えています。とはいえ、この状況では先の見通しも立てにくいはず。そうでなくても、人生の必要資金を算出するのは簡単ではありません。

ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんに、今やるべき「マネープランの立て方」を聞きました。

1ファイナンシャルプランナー・高山一惠さん 2005年に女性向けFPオフィス、株式会社エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後、株式会社Money&Youの取締役へ就任。女性のための、一生涯の「お金の相談パートナー」が見つかる場『FP Cafe』を運営。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行い、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版、共著)など多数。


いったんの「目安」を作ると、先が見えない不安が減る

――コロナ禍による収入減や、先々の見通しが立たないなど、お金の不安を抱く人が増えていると思います。高山さんはFPの立場として、どう感じていますか。

お金の不安は大きくなっていると感じます。実際に、私のところに相談に来られる方も増えています。特に多いのは、将来への不安。コロナにより今後の見通しが立たない中で、老後資金や生涯の貯蓄をどうすればいいのか。すでに給料が下がった方はもちろん、今は影響が出ていなくてもいつかは減給されるかもしれない、あるいは雇用が心配という声はたくさん聞かれます。漠然とした不安の中で、将来のお金をどう考えればいいのかという悩みが増えているように思います。

あわせて、私のところに相談に来る方の中では、地方や都心部の郊外への移住を望む人も増えているように思います。ライフプランやライフスタイルの転換が進む中で、将来のお金をどう考えるべきかを知りたい方も多いですね。

2ファイナンシャルプランナーの高山一惠さん

――確かに、今は将来の見通しを立てにくく感じます。この場合、何をすればいいのでしょうか?

まずは現在の収入・支出をきちんと把握することです。その収支で、自分や夫婦が描く人生のプランを実行できるかを計算してみることです。

将来のプランは大きな支出から考えてみましょう。まず、住宅ならいつどのエリアでどれくらいの予算の家が欲しいのかを考えてみるべきですね。お子さんの教育をどうするのかも重要です。もし地方へ移り住む予定があるなら、都心部に比べて教育費がかからない傾向にあるので、支出は思ったよりも少ないかもしれません。

そういった一つ一つのプランを明確にして、実現した場合に生涯どれだけの金額がかかるかを算出します。そして、現在の収入でそのプランを達成できるのか、または、何歳までにどれだけ貯金が必要なのかを数字で「見える化」するんですね。

――とはいえ、今後収入が減る可能性もありますよね?

はい。ここで大切なのは「基準」や「目安」を1つ作ることなんです。仮に今の収支で希望のライフプランに足りなければ、家計を見直す必要があります。逆に、今の収支で「余裕がある」とわかれば、もっと上のライフプランも考えてよいことになります。

さらなるポイントは、この目安をもとに、収入が減った場合をシミュレーションしてみることです。具体的には、収入が70%、80%に減少した場合を計算してみます。すると「たとえ給料が70%になっても、この支出を切り詰めればプランを達成できる」といったラインが見えてきます。それがわかるだけでも、漠然とした不安はなくなりますし、目指す先が明確になります。