はじめに

「資産」の意味を考えてみよう

言っていることの意味が分からない人は一度、辞書でもネット検索でも良いので、「資産」という言葉の意味を調べてみてください。資産とは、「会計用語で将来的に企業に収益をもたらすことが期待される経済的な価値」などと書かれているはずです。

企業がどうやって事業を行うのかを会計的に説明すると、まず自分たち、あるいは企業の設立趣旨に賛同してくれた人たちから出資を募って集めた自己資本に加え、銀行など金融機関から融資を受けた他人資本(負債)を元手にして、事業を展開するうえで必要な事務所、工場、製造業なら機械、サービス業ならそのサービスを展開するうえで必要な道具を購入して事業を行います。この、事業を展開するうえで必要な各種機器や道具が資産になります。企業が収益を得るうえで必要な経済的な価値というわけです。

つまり資産とは将来、何かしら収益を生み出すものでなければなりません。これは企業だけでなく、個人の資産形成にも当てはまります。

企業のバランスシートを見ると、現金や預金も資産勘定に入っているので、その意味では両者とも「資産」の一種ですし、急な支払いが生じた時に備えて、ある程度の現預金を持つ必要はあります。

しかし、100万円の現金をずっとタンスの奥に仕舞いこんでおいたとしても、100万円の現金は10年後も、20年後も100万円のままです。1円たりとも増えることはありません。つまり、タンス預金は将来的に何の収益ももたらしてはくれません。

では、預貯金はどうでしょうか。預貯金もバランスシート上は資産勘定に含まれていますし、定期的に「利息」という形でインカム収入を得ることができます。

とはいえ、現在の金利水準で得られる利息は微々たるものです。預入金額、預入期間に関係なく、現在の定期預金の利率は年0.002%。1,000万円を10年間預けたとしても、利息はたったの2,000円です。

日銀が作成している資金循環統計によると、2020年9月末の個人金融資産は1,901兆円となり、はじめて1,900兆円を超えました。このうち現預金が1,034兆円もあり、全体の54.4%を占めています。個人の家計を企業のバランスシートに見立てて考えると、多くの資産が将来、何の収益も生まないところに放置されているのです。