はじめに
米金利上昇が引き続きリスク要因に
1月に入り、米10年国債利回り(名目金利)は1%台に達しました。本来、金利上昇は株式市場でネガティブに捉えられがちで、急激な金利上昇が株価にとって最大のリスク要因といっても過言ではないでしょう。
足元の株式市場でそうした金利上昇を極端に嫌気する反応は見られていませんが、それは実質金利が比較的低位で安定しているためと考えられます。
米国では、名目金利と実質金利の差で求められる期待インフレ率が、昨年11月以降に上昇基調を強め、最近になって2%台に乗せてきました。インフレ期待の高まりが名目金利を押し上げたとみることも可能でしょう。
インフレ期待は経済の成長期待と表裏一体であり、インフレ期待が共存する限りは、名目金利の上昇をさほど問題視する必要はないのかもしれません。米金融当局も意図せざる金利上昇には適切な対応を取っていくとみられます。ただ、インフレ期待を伴わないなかでの名目金利の上昇、すなわち実質金利の上昇には、今後も注意していく必要がありそうです。
年内の高値メドは33,000円
以上を踏まえた上で、新たに設定される年末想定株価は、日経平均株価が31,000円(年内の上値は33,000円程度)、TOPIXが2,000ポイント(同2,100ポイント)です。また、米国株については、NYダウの年末想定が34,500ドル(同35,000ドル)、ナスダックが14,500ポイント(同15,000ポイント)と、それぞれ従来の見通しから引き上げました。
期待通りに、世界景気の回復が順調に進んだ場合、年終盤には米国では金融緩和政策の出口議論が活発化してくることも考えられます。一方、日本では、秋頃に政局の流動化を嫌気する展開が繰り広げられる可能性もあります。株価の推移は2020年のような年末高ではなく、秋頃に高値を付けた後は、21年末に向けて軟着陸していく姿がイメージされます。
<文:チーフグローバルストラテジスト 壁谷洋和>