はじめに

支出は、「消費」「浪費」「投資」で考える

ご両親からの教育で、「無駄遣いは極力しない」という価値観を持っていらっしゃるとのことですが、それはそれで素晴らしいことです。ただ、別の価値観として「このままで良いのだろうか」と感じたときに、お金の使い方が気になったのだと思います。ぱーっと散財すれば、今までの自分と違う自分になれるのではないかと思ってしまったりもするでしょう。しかし、ただ散財をしても何かが変わるということはありません。むしろ、使い方と真剣に向き合う良い機会にしていただければと思います。

そこで、1つの指標として、家計再生コンサルタントの横山光昭先生の考え方をご紹介しましょう。横山先生は、支出は、「消費」と「浪費」と「投資」に分けることができるといいます。定義は、以下のとおりです。

・消費は、必要なものへの妥当な支出
・浪費は、必要の無い無駄な支出や、過度な嗜好品、贅沢など
・投資は、貯蓄や金融投資などの資産形成と、教養や健康への自己投資

ぜひ家計簿などをつけて、自分の支出を振り返り、「これは消費かな?」「これは浪費かな?」と色分けしてみてください。すると、自分の価値観が見えてくるでしょう。

人生を左右するのは「浪費」と「投資」

重要なのは、浪費と投資です。

浪費は、無駄遣いも含まれるので大敵とみなしがちですが、人生のゆとりや心が潤う贅沢も含まれます。まったく浪費のない人生も味気のないものになりがちですし、ギスギスした生活になってしまいます。全支出の5%くらいに抑えてコントロールしていくと、ゆとりのある家計になっていくでしょう。

また、現状を打破できるかどうかは、どのように投資にお金を使えるかにかかってきます。一口に投資といっても色々とあります。金融投資は、投資信託やETF、株などの資産を買って将来の生活を豊かにすることです。現金貯蓄も金融投資に入ります。未来の生活を豊かにするためのものだからです。

なかでも、私が働く世代に最も重要だと思うのが自己投資です。お金を自分の成長へ投資することで、生産性を高めていくのです。たとえば、英語やプログラミングを覚えるなど、今まで出来なかったことが出来るようになれば、その分、社会に貢献できることが増えて収入を増やす要因になります。

いいお金の使い方の鍵は「浪費」と「投資」

“100年時代”という言葉を生んだリンダ・グラットン教授は、著書『LIFE SHIFT』の中で、金融資産などの目に見える有形資産とは別に、「無形資産」を築いていくことが重要だと述べています。人生が非常に長くなってくると、時代や社会に適応して収入を得続けられるよう変化が求められます。目に見え無い人間的な価値の比重が重要になってきます。

「無形資産」は3種類あります。1つ目は「生産性資産」で、仕事のスキルや知識、人脈や知名度や名声などです。2つ目は「活力資産」で、健康や仲間、家族、愛など生きがいや生活の基盤となる環境です。そして3つ目が「変身資産」で、変化の激しくなる人生の中で、新たなステージや環境に対応できる意思や能力のことです。この変身資産を意識していないと「もう今更だし、変われない」などの思考がはたらき、どんどん変化が出来なくなってしまいます。ダーウィンの進化論にも、生き残る種は、強いものでも賢いものでもなく、変化に対応出来たものだと言っています。こんな時代だからこそ、よりしなやかに変化できる力が求められていると思います。

ご相談者さまも、お金の使い方を考える際、「ぱーっと散財すれば今から変化できるのでは?」と考えてのご相談と思いますが、せっかく働いて得た収入や資産を無駄に浪費してはもったいないです。毎月の収入の中から25%を、無形資産を育てる自己投資も含めた「投資」にまわせると、どんどん成長サイクルに入っていくと思います。

「今」がこれからの人生で一番若い日です。ぜひ無形資産を意識しながら、自己投資をして時代の変化に適応できるような変化をしてみてはいかがでしょうか? ご参考になるところがあれば幸いです。

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