はじめに

日本株は大型株主導からバリュー株へシフト?

日本市場は、前述のロビンフッド騒動による米国株の下落につられる形で1月末に下落したものの、下げ幅を回復し更なる上昇を見せています。2月15日に日経平均株価は3万円の大台に乗りました。その中で選ばれる銘柄も変わってきました。

これまでの日本の株式市場は日経平均株価の方がTOPIXより上昇が目立ち、大型株主導の値動きとなっていました。象徴的なのが日経平均株価をTOPIXで割って表されるNT倍率です。NT倍率は昨年の急落時から比較しても急ピッチに上昇し、現在は過去最高水準で推移しています。

背景には大規模な自社株買いや業績の急回復を見せたソフトバンクグループや、半導体市況の改善により東京エレクトロン・信越化学工業・アドバンテストなど、日経平均構成上位の銘柄の株価上昇が目立ったことが挙げられます。

しかし、ここにきてTOPIXの上昇も目立ってきました。2月2週目には2018年につけた高値を突破し、こちらもバブル期以来の高値水準まで上昇しています。

中でも象徴的なのは、TOPIX採用銘柄をPBRの割高・割安を基準に分類して算出されているTOPIXグロース・TOPIXバリューの指数の値動きです。ここにきてバリュー指数の上昇が目立ちます。

2月15日現在、月間上昇率はTOPIXグロースが6.3%、TOPIXが8.0%の上昇に対し、TOPIXバリューは9.8%の上昇と相対的に強いパフォーマンスとなっています。そのほかにも直近の値動きでは、2月2週目の前半からは米系の証券会社を中心にTOPIXの先物が買い越されるなど、海外勢の積極的な日本市場への参加も見て取れます。

たしかに大型株にはやや過熱感はあるものの、東証1部全体で見ると割安の目安とされるPBR1.0倍割れの企業等も1,000社近くあります。世界で見ると相対的に割安といわれ続けた日本株についにブーム到来となれば、TOPIXも1991年につけた2,000pt台への復帰が期待できるかもしれません。

ネガティブなニュースフローには注意

相場にとって明るい材料ばかりのように見える株式市場ですが、国内で不安要素が全くないわけではありません。これまでの一本調子の値動きを考慮すると、下落方向に傾いた時は上昇時と同様に大きな値動きが予想されます。マーケットのセンチメントの変化には注意が必要でしょう。

不確定要素としては、まもなく開始が予定されているワクチン接種のスケジュール見通しや、オリンピック組織委員会の森会長が辞任したことでさらに注目を集めているオリンピックの開催可否、1~3月期に予想されている日本の低調なGDP成長率などが挙げられます。また最近では2月13日に福島県沖を震源とするM7.3の地震が発生し、自然災害への懸念もくすぶっています。

過度なリスク評価は絶好の上昇機会の足かせとなってしまう可能性もありますが、1年以上上がり続けている相場の休息のタイミングを見計らう時期も近づいているかもしれません。

<文:Finatextホールディングス アナリスト 菅原良介>

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