はじめに

遺言書・エンディングノートの作成は必須

おひとりさま・一人暮らしの方に、準備しておいていただきたいのが、遺言書とエンディングノートです。

遺言書は、財産を誰に引き継ぐのかを書き記すものです。法律上有効にするために、書き方には決まりがあります。書き方が間違っていると無効になることもありますので、専門家に相談することをお勧めします。

遺言書というと、「遺産争いを防ぐために作る」というイメージがあるかもしれませんが、「お世話になった人に財産を渡したい」「お世話になった施設に寄付をしたい」などの希望を叶えることもできます。争いがなくても、相続の手続きを簡単にするという意味で、公正証書遺言を作成することをお勧めします。遺言書には、遺言執行者(遺言書の内容を実現させる人)を記載することも忘れずに。

エンディングノートは、遺言書に書き記す財産以外のことを書き残すのに適しています。ご自身の想いや願いを書いておくと、意思を伝えることができなくなったときにも尊重してもらうことができます。本人の希望がわかることで、ご家族やお世話をされる方が迷わずに済み、負担を軽減すことができるのです。

例えば、治る見込みのない病気にかかり、緩和ケア、もしくは延命治療のどちらを希望するのかなどを書いておく、「尊厳死宣言書」というものを作成することもあります。

葬儀についての希望や状況を記しておくこともできます。葬儀社とのがあれば契約内容について、葬儀の規模や内容、連絡してほしい人とそうでない人、遺影についてなど……葬儀は時間のない中で決めていくことが多いので、本人の希望があれば悩まずに済みます。

「デジタル遺品」の整理も忘れずに

パソコンやスマホなどの「デジタル遺品」についても、残された人たちに扱い方の希望を伝えておくとよいでしょう。

パソコンやスマホのID、パスワードがわからなくて、銀行、証券会社の取引がわからない。友人、知人の連絡先がパソコンやスマホの中にあり、連絡をしたいのにできない。写真もすべてロックがかかっているため見ることができない等で困っている方々をたくさん見てきました。エンディングノートに書いても良いですし、別途ID、パスワードを書いたものの保存場所を書いておくのも良いと思います。

遺言書、エンディングノートに関しては、その存在を誰かに伝えておかないと、使うことができません。生前から家族や知人、信頼できる人にお知らせしておきましょう。

タカコさんは67歳で終活・相続のことを考え始めましたが、67歳が早いとは言えません。50代のころから考えはじめてもいいでしょう。人生をよりよく生きるために、動けるうちに終活・相続の準備をして不安、心配を取り除いていきましょう。自分一人で考えず、専門家に相談することをお勧めします。

(行政書士・相続診断士・終活カウンセラー:藤井利江子)

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