はじめに

排卵誘発剤による身体的リスクも

――長期間卵子を凍結した場合には、卵子の劣化は起こりえないのでしょうか。

菊地:凍結保存自体は、冷蔵庫とは違って液体窒素の中に入れることでエネルギー損失がほぼゼロになるので関係ありません。極端に言えば、細胞はフレッシュなまま何十年でも凍結することができます。

ただ、受精卵は受精後、胚になった時点でグレードが評価できるのですが、採った時点の卵子の評価はいまだに研究段階です。また、凍結技術と融解技術、そもそもの卵子の質など複合的な問題が絡み合います。

たとえ20代でも常に状態のいい卵子が採れるとは限りません。たまたま採卵したときの卵子の状態がよくない可能性もあります。それをたくさん凍結保存したところで5年後、10年後に「妊娠できませんでした」という結果になるかもしれない。どういう面も理解すべきポイントです。

――そのほかのリスクはありますか

菊地:排卵誘発剤は卵巣を刺激して卵子をたくさん採りますが、卵子がたくさん採れるほど卵巣過剰刺激症候群という症状のリスクが上がります。普通は1個しか排卵しないのに、20個も排卵させるために卵巣は大きくなり、ホルモンがたくさん出てしまう。

そのため、薬で調節しないと合併症で腹水や胸水が貯まったり場合によっては死に至ったりするケースもあります。もちろん防御する方法はありますが、テクニックも医師によって違います。卵子凍結はそうしたリスクがあることは理解しないといけません。

――クリニック選びのポイントは

菊地:選び方はとても難しいのですが、基本的に症例数が多いところがいいと思います。件数をこなすにはそれなりのスタッフも必要ですし、先生も慣れているでしょうから、合併症があっても対処に慣れている可能性が高いです。

また、排卵の誘発方法もクリニックによって違います。件数が多くても毎回卵を1個、2個しか採っていない場合もあるかもしれません。どこのクリニックでも同じように個数が採れるわけではありません。

クリニックに電話で卵子凍結の件数や誘発方法を詳しく聞く方法もありますが、クリニックに大事な卵子を委ねるわけですから、複数の病院を回ってお話をすることもおすすめです。カウンセリングや採血ならそんなに高くないので、ドクターショッピングして合う医師を吟味してもいいでしょう。最終的に必ず妊娠できるかはわからないので、もしダメだった場合に「この先生なら納得できる」と思える医師がいいと思います。

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