はじめに
投資主体の変化・利用用途の拡大から期待感が強まる
今回のブームの要因は何なのでしょうか。それは、世界的な金融緩和を背景とする金余りもさることながら、投資主体の変化と利用用途の拡大が挙げられます。
まず、投資主体の変化の点では機関投資家の参入がポイントです。前回の2017年のブームの際は個人投資家が主体で、レバレッジをかけた活発な取引によって市場が盛り上がりました。しかし今回のブームでは、機関投資家による比較的長期的な視野の資金が流入してきています。世界的な低金利により運用難となる中で、流動性も徐々に高まってきている暗号資産は新たな投資対象として注目されつつあります。
イーサリアム先物やカナダで初めて上場したビットコインETFをはじめ、アメリカでもビットコインETFの上場が期待されており、今後更なる金融商品の拡張により投資家の拡張は更なる相場の盛り上がりの材料となるかもしれません。
加えて、2021年に入り利用用途も本格的に拡大しています。とりわけイーロン・マスクCEO率いるテスラの動向は大きく影響を与えています。2021年1月につけた高値を再度ブレイクした2月の上昇劇は、テスラが2月8日に15億ドルのビットコインを購入したことがきっかけと言っても過言ではありません。
その後も3月に入り、電気自動車の決済にビットコインを利用できるようにするなど、着実に施策を進めています。最近ではドージコイン(DOGE)もイーロン・マスク氏のツイートで急騰しており、同氏は現在、暗号資産市場に多大な影響力を持っています。
このように、現在の暗号資産市場は一人の影響力のある人間によって価格が大きく左右してしまう脆弱性を有しており、価値貯蔵あるいは決済手段としての安定性には欠いています。
とはいえ、米ペイパルが決済サービスを開始したほか、クレジットカード大手のVISAも決済に乗り出すことを発表するなど、着実に事業者による決済事業への進出が進んできています。
いままでは期待でしか語られていなかった暗号資産の用途が現実的なものになっていることも相場の追い風となっているでしょう。