はじめに

水滴の米IPOには中国当局が難色?

2016年の創業以降、水滴のこれまで事業の継続・拡大を大きく支えたのは、各投資ラウンドにおける資金調達でしょう。その規模は合計でおよそ40億元(640億円)にのぼります。

テンセントからは、2016年のエンジェル期以降、シリーズAから事業の拡大や経営の安定化を経てシリーズDまで、更にはIPO準備に向けた2020年11月にも追加投資を受けています。米IPO前の株主構成をみると、水滴の経営トップ(沈鵬氏、楊光氏、胡堯氏など)が26.4%を保有しているのに対して、テンセントの子会社がそれに次いで22.1%を保有しています。

水滴による米国でのIPOには、既存投資家へ収益化の機会を提供し、中国における今後のヘルスケア事業や保険事業におけるサービス・技術の更なる研究・開発、事業拡大、台頭する同業他社に対する競争力の強化といった目的もあるでしょう。

しかし、中国内においては当局が規制を強めています。2020年11月には、テンセントと並ぶ中国の巨大テック企業アリババの傘下にあるアントグループが香港と上海市場への上場を予定していましたが、突如延期となりました。これには、中国当局の介入が噂されています。

今回のIPOについては、このアントグループなどの件もあり、中国の当局が難色を示しているという報道もありました。テンセントはこれまでアリババと同様の金融事業戦略をとってきました。今回の水滴の米IPO申請の決行が今後、水滴やテンセントの事業にどのような影響が及ぶのか、注視する必要があるでしょう。

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