バブル崩壊から経済格差、フランス革命へ

しかしバブルである以上、いずれは崩壊します。

ジョン・ローが人生のピークを迎えていたころ、ミシシッピ会社の株式はすでに値下がりを始めていました。さらに株式市場の外では、深刻なインフレが進行していました。ローがあまりにも急速に貨幣の流通量を増やしたためです。結果、銀行券は信用を失っていきます。フランス政府はなんとか紙幣を使わせようと、金銀の所有を禁じるという愚策まで取りました。

しかしミシシッピ会社のバブル崩壊と、銀行券の信用失墜は、もはや止められませんでした。

5月末にはジョン・ローの作り上げた経済体制は完全に崩壊。6月1日には金と銀がもともとの地位を取り戻しました。身の危険を感じたローは12月、フランスから逃亡しました。

ジョン・ローの巻き起こした騒動は、フランス経済に深い爪痕を残しました。多くの人がバブル崩壊によって財産を失い、またインフレによって紙幣そのものが信頼を失いました。このことがフランスに現代的な金融制度が根付くのを遅らせ、ランティエたちをのさばらせることに繋がります。

そして既得権益層と庶民との絶望的な経済格差は、やがてフランス革命の火種の一つへとなっていくのです。

オランダとフランスの明暗

オランダのチューリップ・ブームが経済全体にそれほどダメージを与えなかった一方、ミシシッピ会社はフランス経済全体を混乱に陥れました。二つの事件のいちばんの違いは、「過剰流動性」の有無だと言っていいでしょう。

過剰流動性とは、かみ砕いていえばお金の刷りすぎのことです。実際の経済に必要な以上にお金を印刷すると、富裕層はお金で買えるものがもはやないので、投機に熱を上げるようになります。その結果、バブルが大きく膨らみ、それが弾けた際のダメージも深刻になるのです。

ジョン・ローの発明した不換紙幣は、今では私たち全員が当たり前のものとして使っています。しかし、ローの時代にはあまりにも早すぎました。無分別に紙幣を印刷し続けた結果、ミシシッピ会社のバブルはフランス全土を巻き込む経済的混乱をもたらしたのでした。

■主要参考文献■
フェリックス・マーティン『21世紀の貨幣論』東洋経済新報社(2015年)
ニーアル・ファーガソン『マネーの進化史』ハヤカワノンフィクション文庫(2015年)