はじめに

新型コロナウイルスの感染者数増加は、外食業界とりわけ居酒屋業界を直撃しています。
今回は、居酒屋業界をとりまく状況と、苦境から脱出すべく新たな挑戦を始めた注目企業を紹介します。


コロナ禍で続く居酒屋業界の苦難

2020年4月の緊急事態宣言発令により、多くの居酒屋チェーンは店舗営業の休業に踏み切りました。5月下旬の緊急事態宣言解除後、店舗営業を再開したものの、自治体によっては営業時間の短縮要請を行っていたことから、売上高の回復は、ほかの外食業態(焼肉チェーン、回転すしチェーン)に比べると遅れました。

同年10月の「Go To Eat」キャンペーンで売上高回復傾向がみられましたが、2021年1月に再び、緊急事態宣言が発令されました。2回目以降の緊急事態宣言時に、ようやく営業時間短縮協力金が支払われることになりましたが、一律1店舗1日6万円ということで大型店舗を展開する会社と小型店舗を展開する会社との不公平感が広がりました。

2021年4月には3回目の緊急事態宣言が発出されました。3回目の緊急事態宣言は1~2回目の緊急事態宣言と異なり、酒類提供そのものが、禁止されており、居酒屋業態の売上高3~4割を占める酒類の売上高が期待できない状態となっています。

居酒屋業界が進む道

イートインがだめならば、テイクアウトです。ファーストフード業態の日本マクドナルドHD(2702、JQS)などはテイクアウト、デリバリーを強化して売上高は好調に推移していますが、居酒屋チェーンの大半は空中店舗(2F以上もしくは地下階)であり、テイクアウト需要を取り込めていないのが現状です。

緊急事態宣言解除後も 「テレワーク」の一般化や「ワーケーション」(ワークとバケーションを組み合わせた造語)など働き方改革が進んでいることから、都心部のオフィス人口はコロナ前に戻らないと指摘されています。

コロナ前の居酒屋マーケットは1兆円程度ありましたが、いちよし経済研究所では2020年は5,000億円まで落ち込んだと推測しています。新型コロナウイルスが落ち着いて通常営業に戻っても6,000~7,000億円程度までしか回復しないと予想しています。

居酒屋チェーン各社は、2020年は「不採算店舗の閉鎖」「手元流動性(現金)の確保」といた守りの経営をしていました。2021年からは、脱アルコール業態の開発、冷凍食品の販売、Eコマースへの取り組み強化など居酒屋一本足打法からの脱却を進めていくと思われます。

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