はじめに
健康経営はコスト削減にもつながる
日頃から従業員の健康を管理することは、生産性向上に必要な会社経営の一環と捉えられています。従業員が出社していても、何らかの不調により頭や体が思うように働かず、本来発揮されるべきパフォーマンス(職務遂行能力)が低下している状態(プレゼンティーイズム)を回避できれば、生産性の向上が促進されます。風邪や花粉症の疾患時などを想像すれば、パフォーマンスの低下が感じられるでしょう。
医療費からみても、企業の積極的な取り組みが必要です。心身に疾患を抱えた状態で勤務を続けていると心筋梗塞などの重大な疾病が発生するリスクが高まり易いです。長期入院になった場合の治療費や代替要員の手当てなどを考えれば、突発的に発生するリスクは極力回避しておきたいものです。健康保険組合の赤字は該当企業の負担となることから、従業員の治療費増は、企業の負担を増やし、経営逼迫要因にもなり得ます。
また、過労死が発生した場合、企業イメージの低下を招くとともに、採用や継続雇用にも悪影響を及ぼす可能性があります。労働者不足が深刻化する中で優秀な人材を確保するためには、労働災害への対応は避けて通れない課題となっています。
「健康経営銘柄」を含む「健康優良法人」認定企業は、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価されるでしょう。
健康経営銘柄の株価パフォーマンスは?
健康経営は株価パフォーマンスにも好影響を与えている可能性があります。今年3月に発表された「健康経営銘柄2021」の株価指数と、TOPIX(東証株価指数)の推移を比較すると、「健康経営銘柄2021」がTOPIXを上回って推移しています。
従業員の健康維持・増進への取り組みによって、企業価値が向上したとの反応を市場が示したと推察されるでしょう。
<文:チーフESGストラテジスト 山田雪乃>